京都新聞TOP > 政治・社会アーカイブ >また働きたい
インデックス

(中)労災申請ためらわないで

認定へのハードル高いが
労災申請の流れ

 宇治市のタクシー乗務員の男性(48)は二年前、労災の療養・休業補償給付を申請した。うつ病になり、休職せざるを得なくなったのは、当時の勤務先での直前の長時間勤務が主な原因と考えたからだ。

心理的負荷を 強・中・弱で評価

 労災申請の窓口は、勤務先の市町村を管轄する労働基準監督署。担当職員は申請者から聞き取り調査をするほか、勤務先の関係者や主治医らから話を聞き、発症日を特定し、その前六カ月間の出来事を国の判断指針に照らして評価する。

 まず「業務による心理的負荷評価表」=表参照=で「仕事の量・質の変化」「対人関係のトラブル」などに関する具体的出来事をあてはめる。指針は本年度から改定され、具体的出来事は十二項目増えて計四十三項目となった。各出来事は心理的負荷が三段階で分類されている。

 評価は変化の程度などに着目して修正した上で「弱・中・強」の総合評価を下す。「強」に評価されることが認定の前提で、さらに家族関係などの業務以外の心理的負荷や既往症なども考慮して、認定か否か決定される。

 精神障害に関する労災申請の請求件数は、京都労働局管内で二〇〇四年度が計十八件だったが、〇八年度は四十件まで増えた。認定件数は〇八年度で十件だった。

 男性は申請の約半年後に「不支給決定通知」を受け取った。労災と認定されなかった。

 決定に不服があれば、労働局の労働者災害補償保険審査官に審査請求ができる。審査官が労基署の決定を再検討するが、このハードルも高い。京都労働局では〇六−〇八年度の三年間、精神障害の審査請求に対する決定は計三十一件あったが、労基署の決定を取り消して労災認定したケースは一件もなかった。

 男性も審査請求したが棄却された。その代わり、審査官の決定書の写しが手に入ったのは収穫だった。聴取内容や判断理由が確認できたことで、多数の疑問が浮かんだ。

 例えば、駅で待機する「走行していない時間」を、決定書では「休憩時間」と記していた。客待ち時間は「労働時間」に含むという業界の定義と異なる。会社側の説明と本人の主張が食い違っている部分も多々あった。

 男性はさらに東京にある労働保険審査会に再審査請求をした。審理で呼ばれたのは、八カ月後。交通費は自腹だ。男性は主に労働時間の評価に対する疑問点を訴えた。

「意見書」添えて 主張を明確に

 すでに傷病手当金が支給される一年半は過ぎていた。男性は「労災申請は時間もお金もかかる。それで納得できる結果ならいいが、きちんと審査しているのか不満がある」といい、現在は審査会の決定を待ちわびている。

 労災申請を支援する京都労災職業病対策連絡会議(京都市中京区)は、申請者に対し、所定の書類に加えて「意見書」の提出を勧める。業務の状況や発症との因果関係などを整理して、主張を明確に伝えるためだ。

 ただ、精神疾患で休職したのを「自分のせい」と自らを責め、申請をためらう人もいるそうだ。

 芝井公事務局長(46)は「労災申請により労基署が勤務先を調べることで、職場改善につながることもある。病気になった原因が業務にあると思うなら、一歩踏み出してほしい」と呼びかける。

表:「職場における心理的負荷評価表」に追加された主な項目

【2009年4月19日掲載】