京都新聞TOP > 政治・社会アーカイブ >また働きたい
インデックス

(1)精神科医 島悟 京都文教大教授

会社に精神科医が必要 総合的対策、経営にもプラス
厚生労働省の委員も務める島悟さん。「今年は国のメンタルヘルス対策にいろいろと動きが出てくる」と見通す(京都市中京区)

 メンタル面で不調を訴える人の増加や自殺予防の観点から、職場でのメンタルヘルス対策がますます重要になってきている。課題にどう向き合うのか、連載第四部は識者や当事者の提言をまとめる。初回は、企業など事業所が示すべき姿勢について精神科医の島悟・京都文教大教授に聞いた。

 −事業所の担当者は対応を模索している。

 いま、職場の健康問題の主はメンタルヘルス。まずは、会社がきちんとした精神科医と契約すること。従業員の主治医でなく、会社の専門医が休職するかどうかを判断する。顧問弁護士と同じで、会社の中に判断する人が要る。

国の指針に即し 従業員に明示を

 −「事業所側が従業員のメンタルヘルスに対して十分配慮してくれない」という声も聞く。

 型どおり言えば、会社は国の指針に則して仕組み作りをする必要がある。それをきちんと従業員に明示することだ。ある企業が「長く休んだ人はいない」と言っていたそうだ。なぜなら、辞めさせていたから。これも問題だ。私がかかわっているある大企業では、休職者がずっと増えてきていたのが、当初予測の70%ほどに減った。

 −何が功を奏したのか。

 外部の専門家を活用しただけでなく、総合的な効果だ。何はともあれ、専門的な資源が乏しいとだめなので精神科医を新たに雇用してもらった。管理職やカウンセラーを集めて意識改革のきっかけをつくったし、社員教育にも力を入れた。平行して、復職などの仕組み作りをやっている。

 −仕組みづくりが大切だということか。

 調子が悪いといってたびたび会社を休む人に対し、周りは怠けているのではと思う。会社がきちんと休職制度をつくって運営すれば従業員も納得でき、不公平感がなくなる。

結局大事な職場の意思疎通

 不調者を早期に発見するため、健康診断でメンタルもチェックする。配置転換や新入社員などストレスが予想される出来事があった場合の面接も以前から実施している。

 また、外部の相談窓口を設置した。全社的にメンタルヘルスに特化した対策会議を開いているのも珍しい。総合的な取り組みを地道にやってきている。

 −企業にはメンタルヘルスに気を配る余裕がないのでは。

 強調したいのは、メンタル対策は経営にもプラスということだ。確かにどこも余裕がないが、不調者を一人抱えると、どのくらい生産性が落ちるか。それなら専門職を一人非常勤で雇用しても割に合う。一年単位でも費用対効果は十分ある。もっと金銭勘定の視点で考えたらいい。

 −職場のコミュニケーションの大切さも訴えている。

 仕組みを作っても、結局はコミュニケーションが大事。上司は週に一度は部下一人一人と話す時間をつくってほしい。「きちんと話すのは評価面接だけ」という事例を聞くが、どんなことで困ってるかなど聞いてほしい。

 今のような時期はトップからのメッセージも重要。先の見通しを示すこと。会話の際の仕草など非言語的コミュニケーションも含め「コミュニケーション再考」が必要だ。

しま・さとる 一九五一年京都府生まれ。慶応大医学部卒。神田東クリニック(東京)院長。京都文教大・産業メンタルヘルス研究所長。著書に「メンタルヘルス入門」など。

【2009年5月17日掲載】