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(2)清水良子 前京都職対連事務局長

孤立が一層 傷を深める 労働者守る体制 企業は構築を
「あらゆる痛みをみんなで解決していこうという企業風土が、メンタル問題の取り組みを推進させる」と語る清水さん(兵庫県小野市)

 過重労働やパワーハラスメント、不安定な雇用環境…。二十年にわたって労働者の相談に応じ、メンタル不全の背景をよく知る前京都労災職業病対策連絡会議事務局長の清水良子さんは、職場での「孤立」に問題の根幹があると指摘する。

 −長年相談に応じてきて感じたことは。

 精神疾患の労災相談が入るようになったのは十二、三年前、過労自殺の遺族への支援がきっかけだった。五、六年前からは面接相談の三割がメンタル関連になった。

 相談に来る人は、職場で孤立している点が共通する。ノルマや成果を次々と求められる過重で長時間の労働がベースにある。一方、裁量が大きかったり、支えがあることで大丈夫な人もいる。

 傷を深める要因は、仕事が正当に評価されず、理解し合えない人間関係や組織の在り方だ。苦労や頑張りが評価や報酬に現れない。困った時に誰もサポートしてくれない。「大変やな」と共感し合える同僚がいない…。

同僚の息づかい感じる環境で

 特に非正規労働者は職場を転々をさせられ、仲間もいないケースもある。評価や期待が示されず、雇い止めが怖い。気が付けば重症化している。

 −職場のゆがみが見えてくるようだ。

 仕事が多すぎて苦しくないかなと、互いの息づかいを感じながら仕事ができる環境をつくることが大切。「おはよう」も言わず、隣同士の連絡でさえメール。これはつらい。

 企業は労働者を人間として大事にし、労働者が働くことで成長できるという社会的責任を認識する必要がある。メンタル対策に本腰を入れる企業は、少なくとも従業員を孤立させてはいない。経営陣に意識がないなら、従業員全体でそういう風土を作り上げていかねばならない。

 メンタル不全の一因となるパワハラの加害者に挙がるのは、中間管理職が多い。上司に追い立てられ、部下を動かす指導力がない。権威を見せつけるため、下へ下へといじめが連鎖する構造になる。

 −労働組合ができることは。

 心に不調を感じる仲間が相談に来た場合、対応できるノウハウがあるか。メンタル面の相談窓口という看板を出せる態勢が要る。ケアと予防策の充実という二本立ての取り組みが欠かせない。

 −現状の労働行政が抱える課題は。

 長時間労働やパワハラを直接的に禁止する法律がないのは問題だ。今のように雇用環境が劣化した状況では、強制力の強い労働者保護法制がないと、企業は自主的に労働者を守ろうとはしない。

 行政の動きは非常に鈍い。業務が原因のメンタル不全が深刻化した実態が先行し、判例が積み重なってからようやく、労災認定の判定基準に反映される。今までにどれほどの犠牲者が出ただろうか。被災者側に一点の曇りもない立証責任を実質的に課している点も厳し過ぎる。認定基準は、まだまだ実態に即していない。

本人に罪悪感 持たさぬように

 −病に苦しむ同僚にどう接したらいい。

 「頑張りすぎたから、ゆっくり休んで」と、本人の罪悪感を取り除いてほしい。今の社会の病理がたまたま現れたのだ、と。互いに頑張っているんだという信頼感と、大事に思っているという気持ちを込めて向き合うことが大切だ。

しみず・よしこ 一九四九年兵庫県生まれ。保育士を経て八九年から労災申請手続きや裁判を支援する「京都労災職業病対策連絡会議」=TEL075(803)2004=専従職員。今年三月退任。

【2009年5月24日掲載】