京都新聞TOP > 政治・社会アーカイブ >また働きたい
インデックス

(3・上)漫画家 細川貂々・望月昭さん夫妻

焦る夫、試行錯誤の妻 「居場所なく、死にたく」 「自殺の気配全く気付かず」
うつ病になって1年ほどたってから「低め・安定の生活でもいいと決めた」という望月昭さん(左)と細川貂々さん(千葉県浦安市の自宅)

 漫画家の細川貂々(てんてん)さんが夫の望月昭さんとのうつ病闘病体験をつづったコミックエッセー「ツレがうつになりまして。」がベストセラーになっている。サラリーマンだった夫がどのような状態に陥り、妻はそれとどう向き合ったのか。つらい時期を乗り越えた二人は「焦らないで」と呼びかける。



 −読者からはどんな反応が?

 貂々「初めて自分と同じ症状が書いてあった、すごく励みになったという感想が多かった。病気の方からたくさん来たのは、びっくりしました」

 望月(以下、ツレ)「生活の中に病気があって、どうなるのかということを書いているからでしょうか」

 〈外資系IT企業に勤めていた望月さんは二〇〇四年一月、うつ病と診断され、間もなく退職する。三十九歳だった。貂々さんにとって「うつ病って何?」という戸惑いから始まった〉

つらい心情を 日記に書き留め

 −本は望月さんの日記を元にしている。

 貂々「彼が『つらい、つらい』と、愚痴を繰り返すんです。昨日より今日の方がちょっとは良くなっているんだから、心情を日記に書き留めたらどうかと思って勧めました」

 −驚くようなことも書いてあった?

 貂々「自殺未遂のことですね。結構詳しく書いてあって、初めて知ったので、びっくりしました」

 −一緒に生活していて、自殺の気配は分からなかった?

 貂々「ぜんぜん気付かなかったですね」

 ツレ「うつ病になり始めた時は『死にたい』と言って会社を辞めたんです。逃げたくなった感じで。その後、治りかけてきたときは居場所を見つけようとして失敗して、死にたくなるという感じだった。生活する上では隠していました」

 −バリバリ働いていたころと折り合いをつけるのが難しかったのでは。

 ツレ「アルバイトからせっかく潜り込んだ会社だったので、そこから降りるのが怖かった。最先端の仕事で、やりがいがあった。休んだら、ついていけなくなるんじゃないかと、すごく焦りました」

 〈うつ病と診断される半年前、会社で大規模なリストラがあり、望月さんの担当業務は激増。不眠に襲われるようになる〉

状況悪くなると すべてが悪化

 −仕事がうまくいってると、無理をしがちだ。

 ツレ「このチャンス逃しちゃだめ、という感じで、ずんずん行ってしまった。ところが、いったん状況が悪くなると、全部うまくいかなくなる。休みも取れない。最悪の時がきてしまった」

 〈退職後の望月さんは自宅で寝込む日々が続く。貂々さんは自宅で仕事をしながら、うつ病になった夫との接し方を試行錯誤する〉

 −貂々さんが夫と接する際、つい失敗してしまったことは?

 貂々「山ほどありますが、ストレスがたまったときに『病院に入院しろ。治るまで帰ってくるな』って、怒ってしまったんです」

 ツレ「『こんないつまでも治らない病気は聞いたことがない』って、治るまで目の前に現れないでと言われました。それをもろに受けて、自分がいなくなったらいいんだと、短絡的に考えてしまうんです」

「ツレがうつになりまして。」(幻冬舎) 2006年3月発行。うつ病の症状や家族の戸惑いを、ユーモアを交えた漫画とエッセーで描いている。続編「その後の―」も発行された。略称「ツレうつ」。同作品を原作にしたNHKテレビドラマが29日より毎週金曜に放映中(全3回)。

【2009年5月30日掲載】