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(3−下)漫画家 細川貂々・望月昭さん夫妻

一生付き合うと思えば楽に 夜は必ず明ける。違う朝が来る
望月昭さん・細川貂々さん夫妻は昨年、長男の千歳君を授かった。闘病をへて、新しい生活を始めている(千葉県浦安市の自宅)

 〈自殺未遂も起こした望月昭さん。調子の浮き沈みを繰り返しながら、発病から二年ほどして回復に向かう〉

 −望月さんが妻の貂々(てんてん)さんの配慮でよかったと感じたことは?

 望月(以下、ツレ)「『もう治らなくていい、今の方が楽しい』って言ってもらえて楽になったんです」

 −普通は「早く治ってよ」と願うが。

 貂々「治らなくてもいいって思ったんです。ずっとこのまま病気と付き合うという気持ちでいれば、別に嫌だって思うこともなく、日常生活の中に病気があるって切り替えてしまえば、いい。人込みには出かけられないけど普通に生活できるし、薬を飲み続けたとしても、いいんじゃないかと」

 −多くの人は病気を治そうと一生懸命で、治らないと落ち込む。

 貂々「もう病気と一生付き合おうって考えたら、お互いが楽になったんです」

 ツレ「治らなくていいと二人で一度決めたところ、そこから症状がすごく回復した」

家族は見守る姿勢で

 貂々「彼はもう大丈夫です。だから、拒否するばっかりじゃなくて、受け入れるってのが大事なのではないか。調子の浮き沈みが激しいので、家族の人は一緒になってうろたえてちゃだめ。自分のやるべきことをやりつつ、見守るという姿勢でいたらいい」
 〈回復した望月さんは、貂々さんのマネジメントをする会社を設立。一方、貂々さんは思いがけず妊娠し、昨年、長男を出産した。望月さんは今や「主夫」として、育児や家事に充実した日々を過ごしている〉

 −闘病をへて、今度は子どもが生まれて、ぜんぜん違う生活になりましたね。

 貂々「はい。うつ病になったとき、五年後にこうなるとはまったく思いませんでした」

 ツレ「病気の後の人生はいろんなことをあきらめていこうと決めたのに。振り返ると、ぜんぜん別の人間になったような気がするときがあります」

 −本で「夜は必ず明ける」と書いていますが、多くの人は「夜はこのまま明けないのでは」と不安になる。

 ツレ「ただ、夜は明けたんですが、来たのは前の日とぜんぜん違う朝です。病気に関してはうまくあきらめて、逃げて、乗り越えていかないとだめです」

 貂々「病気になる前に戻りたいという気持ちは分かるんですけど、無理じゃないかって思う。いかに自分でよい方に考えるかということではないか」

災難に見えても焦らないで

 −同じような立場の人たちに一番いいたいことは。

 貂々「焦らないでください、ということです。なるべく冷静に」

 ツレ「病気だけじゃなくて、いまは景気がどんどん悪くなって、いろんな形での災難が来ると思うんです。それに関して、表面的には災難に見えても、もしかしたら、じっと見てみると、そこから何かいいことがあるかもしれない。焦って、事態をもっと悪くしてしまうこともあるので、性急に結論を出さないでほしい」

 次回は6月7日掲載予定です。

ほそかわ・てんてん 1969年生まれ。漫画家・イラストレーター。近著に「私が結婚できるとは」(幻冬舎)。
もちづき・あきら 1964年生まれ。主夫の傍ら妻の仕事のマネジメント会社経営。著書に「こんなツレでゴメンナサイ。」(文藝春秋)。

【2009年5月31日掲載】