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(4)精神科医 遠山照彦さん

じっくり患者支える姿勢を 長時間診療 採算取れる報酬体系に
遠山さんは、労災申請の場面で当事者の側に立つ意見書も書いてきた。「『いかに人を使い捨てるか』という現状を、政策として変えないといけない」(京都市右京区・春日診療所)

 メンタルヘルス問題に注目が集まる中、短い診療時間や薬の大量投与など精神医療に対し、患者からは疑問が出ている。労災申請や過労自殺の訴訟にもかかわり、きめ細かな診療に取り組む春日診療所(京都市右京区)の精神科医、遠山照彦さん(50)に医師と患者の関係について聞いた。

 −医師と十分なコミュニケーションがとれない「5分間診療」が問題となっている。

 精神科診療所は、1日40人の患者を診ないと経営が成り立たないとされる。本院の場合、朝から晩まで診療を続けて予約枠は22人で1人の平均診療時間は約27分。病状に応じて15〜20分もあれば、30分、1時間半になるケースもある。患者の生きる上での苦しみに耳を傾け、世間の偏見や家族との向き合い方を伝えているとすぐに時間がたってしまう。

 だが、現行の診療報酬の設定だと、5分間で診療することが最も利益を上げるため、長時間診療は割に合わない。経営は厳しい。

 患者はしんどい中を生きているのだから「よく来てくれましたね」とねぎらいの言葉をかけ、体調や薬の具合を聞き、仕事や暮らしぶりについて話そうと思えば、最低でも15分は必要と感じる。その程度の診療時間でも採算の取れる診療報酬を、と願っている。

薬だけに頼らず意思表す訓練

 −薬だけに頼らない治療の可能性は。

 薬にも限界がある。例えば、責任感が強くて完ぺき主義のうつ病患者なら、頼まれごとを断る練習をしている。自分の限界を知り、「それ以上やると倒れてしまいます」と言えばいいんだと。また、医師との信頼関係があってこそ薬の効果が表れる部分もある。患者を支え、力づける姿勢が医師にはいる。

 −患者は精神科医とどのように付き合えばいいか。

 精神疾患の患者は言うべきことを言ったり、断るのが苦手な傾向があるが、医師に遠慮することなく患者として言わなければいけないことは全部言う勇気を持ってほしい。その意見に耳を傾けない医師なら替えたらいい。セカンドオピニオンを求めて、紹介状を書いてもらってもいい。

制度の導入で 切り捨て懸念も

 −厚生労働省の調査では、うつ病患者が増えている。事業所側も対策を進めているが。

 増加の原因は、住みにくい世の中になっているからだと感じる。狭い規格に適合しないと収入を得て生きていけない。規格に合うかどうかで人間の価値まで決められてしまう変な世の中だ。

 事業所ではここ2、3年、リハビリ勤務の導入が目に付くようになったが、悪い面もある。制度に沿って復帰できない人への融通が利かなくなり、今まで以上に切り捨ての対象になる。

 −周囲の無理解から病状を悪化させる労働者も多い。

 精神疾患は目に見えるわけではなく、体験したことがないと想像しにくい。周囲が理解するのは難しい面もあるが、回復していく当事者の様子を身近で見た人は理解者になれるはずだ。病に陥った経過とその苦しみ、受診や服薬を経て復調したこと、病と付き合う上での心理的な割り切り方…。こうした回復者の体験談を中心に置いて学習するのが有効だと思う。

 とおやま・てるひこ 1958年生まれ。京都大医学部卒。京都民医連中央病院などを経て、2001年から春日診療所神経科長。著書に「統合失調症はどんな病気か どう治すのか」など。

【2009年6月7日掲載】