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(5)臨床心理士 山根英之さん

自分の身は自分で守る 視点も   不調に気付いたら立ち止まる
「企業内部では、メンタルヘルスの問題は人ごとではなくなりつつある」と話す山根さん(京都市中京区)

 メンタルヘルス不全に追い込まれないためには、どんな点に気をつければいいのか。うつ病の同僚とどう接したらいいのか。多くの事業所で面談経験のある京都工場保健会(京都市中京区)の臨床心理士、山根英之さん(45)は「自分でも身の守り方を考えて」と呼びかける。

 −働く人を取り巻くメンタルヘルスの最近の状況をどう思うか。

 ゆとりがなくなっている印象が強い。製造業では、派遣社員が3分の1を占める構造に変わってきた。不調の人を仕組みとして支えたり、面倒見てあげるということが、しにくくなった感じがする。

 −個人で乗り切るのはむずかしい。

 上司は「僕らの時も忙しかった」と言うが、昔と状況が違う。今は成果はなかなか上がってこないのに、短いサイクルで情報が入ってくる。休みでも休んでいる感じがせず、切り替えがうまくいかないで、どんどん疲労がたまる。本人でコントロールしにくい。

 負担が過密になりすぎていないか、職場での対応が必要な部分が出てくる。

サポートの形がどんどん壊れ

 −企業の担当者は対応を模索している。

 仕事を整理し、個人の負担にならないようにと思っても、今の経済状況の中でどう生き抜くかを考えると、そこまでの配慮は現場としてなかなかしにくい。終身雇用、年功序列、福利厚生…。サポートの仕組みがどんどん壊れていってるから。どこかで「自分の身は自分で守っていかないといけない」との視点が必要になると思う。

 −自分で気をつけた方がいいことは?

 不調になるとたいがい「今まで通りとは違う」との感触を持つ。それまでできたことが遅れがちとか、何で簡単にミスするのかなど。空回りし、焦りだけがどんどん出てくる。不安が強くなり、ますます頑張ろうとする。

 そういうとき、ちょっと立ち止まれたり、しんどいなと振り返られると、次の行動に進める。ある程度割り切って及第点をとればいいのではないか、と。

復職者と面談ルール化を

 −不調者に対しては励ましたらいけないと、よく言われる。

 励ますことが危険というのは、相手が自分を責めてしまうことが多いので、要注意ということ。どう声を掛けたらいいのか二の足を踏んでいる。「すごく頑張ってるように思えるよ」と、こちらの思いを伝えるのは全然構わない。「いや、まだまだです」と言われたら、その気持ちを受け止めてあげたらいい。

 −復職した人との接し方について、上司や同僚も戸惑っている。

 お互い慣れるまで時間がかかることを覚悟しなくてはならない。休職から復職した部下に対し「しんどかったら言って」というだけでなく、何曜日の何時に面談するといったルールを決めてほしい。本人から言い出しにくいことがよくある。

 疲れがある、意欲が出ないなど体調の訴えがあれば、医療側に返す。仕事面で困ってることを聞いてあげてほしい。

 やまね ひでゆき 1963年生まれ。大阪教育大卒。京都工場保健会の専任カウンセラー。企業や役所の勤労者の面談や教育にあたっている。

【2009年6月14日掲載】