京都新聞TOP > 政治・社会アーカイブ > 過疎に生きる「水源の里シンポ」
インデックス

綾部で「全国水源の里シンポ」開幕

限界集落再生へ結集 全国組織立ち上げへ
限界集落の課題や活性化策について話したパネルディスカッション(綾部市・京都府中丹文化会館)
 過疎高齢化で存続の危機にある限界集落について考える「全国水源の里シンポジウム」が十月十八日、綾部市里町の京都府中丹文化会館で始まった。基調講演やパネルディスカッションなどで集落が抱える課題や活性化策について意見が交わされた。限界集落のある自治体を結んだ全国ネットワークの立ち上げも決まり、再生に向けた取り組みを広げる。
 綾部市などでつくる実行委が主催。同市は市東部の五つの限界集落を「水源の里」として、活性化に向けた条例を今年四月に全国に先駆け施行。定住支援、特産品開発などで集落の再生を目指しており、その動きを全国にもとシンポを催した。
 二十九道府県五十一市町村から八百五十人が参加。実行委員長の四方八洲男綾部市長が「集落に住む人たちが誇りを持って暮らし、地域を守っていくという気持ちが大切。そのためには上流と下流の緊密な連携が必要」とあいさつ。基調講演では限界集落の命名者の大野晃・長野大教授が「集落を失えば、伝統文化は無くなり、山は荒廃する。下流に住む住民にも水害の増加や海の環境悪化が起こる。森林環境交付税の創設などで国民全体での支援が必要」と訴えた。
 綾部市の水源の里の住民による現状報告の後、綾部、新潟県上越市などで地域振興に取り組むリーダーらが意見交換。集落の人材育成や若者の定住、生活基盤整備などについての課題や活性化策が紹介された。

各山間地住民代表 まちづくり現状報告

 まず、限界集落の名付け親とされる大野晃長野大環境ツーリズム学部教授が「いまなぜ限界集落なのか−明日の日本をみつめるために−」と題し基調講演した。
 大野教授は国のデータに基づいて、総人口のうち六十五歳以上が半数を超える自治体が二〇三〇年に全国で百四十四に達すると紹介。伝統芸能や文化の消失▽山の荒廃に伴う下流域での水害の多発▽山あいの景観が失われることによる日本人の豊かな感性の喪失−につながると警告した。「山と川と海は都市住民や漁業者の生活に直結する。国民全体で限界集落を支援する時期に来ている」と訴えた。
 パネルディスカッションでは、各地の山間地でまちづくりに取り組む行政関係者や住民団体代表ら五人が登壇した。
 豪雪地で知られる新潟県旧安塚町長の矢野学上越市議は「農林業だけでは生計が立てにくく、通学も通勤も困難。若い人も外に出て行く」と指摘。雪処理に伴ってできる道路脇の雪の壁を観光の目玉にして、年間六十万人以上の観光客の誘致に成功した体験から「地元は発想の転換が必要。一方、医療対策は国や県の大きな力でやるしかない」と助言した。
 綾部市の上原直人企画部長は、市が「水源の里」に指定する五集落の人口が過去四十年間で四分の一に減った現状を報告、「早急な取り組みが必要だった。全住民へのアンケート実施や会合で、行政と地域が一体感を持てた」と振り返った。
 他のパネリストも「どれほど厳しい生活環境でも、生まれ育った私たちには安住できる唯一の古里」「食の安全やスローライフへの関心の高まりで、山間地の重要性は高まる」とした。
 満席の会場からは「大都会のまねをせず、地域の良さを生かしてほしい」と限界集落を激励する声が相次いだ。
 最後に大会アピールを拍手で採択した。内容は▽水源の里の住民は自ら立ち上がり、集落再生に向けた取り組みを行う▽流域の住民は水源の里活性化に全面的な協力・協働関係を構築する▽国、都道府県、市町村は、集落再生に向けた総合的施策を講じ、必要な制度創設や財政的・人的支援を行う▽(仮称)全国水源の里連絡協議会を設立し、国民運動を展開する−の四点。
【2007年10月19日掲載】