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不便さ限界 孤立の山里

高齢化進む集落 バス廃止 住民4人冬ごもり
過疎と高齢化が進んだ☆原地区。集落には取り壊された家の門柱が残る(多賀町河内)
 過疎と高齢化が進む集落を、どう存続させるのか。京都新聞社のアンケート調査で、高齢化した地区を抱える自治体が活性化を模索する姿が浮かんだ。社会基盤整備などこれまでの施策が必ずしも人口増に結び付いておらず、新たな対策が迫られている。極度に過疎が進んだ山間集落では、不便で先行きの見えない暮らしが続いていた。

自然生かし 活性策を模索

 トタンぶきの民家十戸ほどが肩を寄せ合う。多賀町河内☆原(あけんばら)地区。高齢化した集落が県内最多だった同町でも、最も奥まった集落を訪ねた。

「うちらが最後」

 多くの家は雨戸が閉め切られ、人の気配がない。洗濯物の見える家に声を掛けた。「冬場は何人かまちに下りる。年中ここにいるのは私らを入れて四人です」。家の主、森下富男さん(73)が家に招き入れてくれた。妻恒子さん(73)と二人暮らし。百人近い住民がいたが、高度経済成長期以降、大半が多賀町中心部や彦根市に出ていった。
 バス路線は廃止された。車のない二人が買い物でまちへ出る場合は、知人に乗せてもらうかタクシーを使わざるを得ない。彦根との往復は約七千円。恒子さんは「気晴らしに週一回くらい出たいけど、年金暮らしにはとても無理」と話す。
 携帯電話は圏外。冬場の楽しみは家の中でテレビを見るくらいという。「みんな、ここに帰りたいという思いはある。でも生活できん。この村もうちらが最後やな」と富男さんはつぶやいた。

空き民家活用

 多賀町企画課は「林業の衰退が過疎化の原因」と話す。☆原地区のような山村で最低限の生活を確保するため▽冬場の除雪▽高齢者へのタクシー代助成−などを行っている。担当者は「行政の力で住民を何十人も増やせない。具体的に何をするかは今後の課題」と、手詰まりを隠さない。
 高齢化地区が十三集落ある高島市は対策として、「モデル的な集落再編事業」と回答した。旧朽木村の八集落を対象とした事業で、住民同士が集落の垣根を越え、地域の活性化にどう取り組むか話し合っている。
 米原市の「定住者促進の仕組みづくり」は、伊吹地区で空き民家を活用して都市住民を呼び込もうという作戦だ。両市とも道路建設など従来のハード整備ではなく、地域の自然や文化などを活用した活性策を模索する。

上下流一体で

 過疎問題を抱えた市町村が連帯する「全国水源の里連絡協議会」が昨年設立され、滋賀県からは高島市、米原市、余呉町が参加した。協議会は、山村の荒廃は▽渇水や土砂災害を招く▽伝統文化や都市住民の癒やしの場が失われる−として、上下流一体となった取り組みを訴える。
 限界集落という言葉を唱えた大野晃・長野大教授は、昨秋に綾部市で開かれた「全国水源の里シンポジウム」で講演し、「限界集落の高齢者でも、ちょっとした買い物やお金の出し入れなど最低限の暮らしができる温かい施策が必要」と指摘。一方で「限界集落を、(消滅の心配のない)存続集落に変えるのは至難の業」として、「(限界集落の前段階に当たる)準限界集落に手だてをほどこし、限界集落化を食い止める『予防行政』が求められる」と訴えた。

※☆は「山」の下に「女」の字です。

【2008年1月23日掲載】