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北部各市 進まぬ空き家活用

人口減、来たれ移住者
(写真上)綾部市が300万円かけて改修し移住希望者に貸し出す空き家。過疎高齢化に歯止めをと、市の期待も大きい(6月15日、綾部市睦寄町)


 過疎高齢化、地域医療の綻(ほころ)び、産業の衰退−。府北部を覆う数々の悩ましい課題。その現状や対策を毎月、横断的に検証し、光明を探りたい。初回のテーマは「人口減少と移住促進策」。北部の各市町がここにきて新住民受け入れに本腰を入れ始めたが、全国の過疎地域は数年前から熱心に手を打っており、出遅れ感も否めない。誘致競争の中、地域活性化の一助ともなる新住民を招くには何が求められるだろう。

 宮津市は6月中に、移住希望者向け支援センターを開設する。住宅や就農、起業などの相談窓口を一本化するのが特徴で、市内の空き家や農地の情報もインターネットで発信する。

 すでに窓口を設け空き家紹介などに注力してきた綾部市は4月、新たに3事業を開始。柱は、市が空き家を借り上げて300万円でトイレや台所を補修改装し、月3万円で希望者に貸し出す試みだ。

 期限の3年以内に市内の物件探しや人脈づくりを進めてもらう狙いで、市定住促進課の永井晃課長は「家主には10年後に改修された家が戻る利点がある」と工夫を語る。伊根町も昨年度、空き家を公費で改修し、10年賃貸した移住者に無償譲渡する策を打ち出した。

 背景には、空き家を登録・紹介する「空き家バンク」など従来の施策の行き詰まりがある。特に物件の流動化は課題の一つだ。各市町とも空き家は多いが、家主が不明だったり、万一の備えや移住者との摩擦などの懸念から登録数が増えない。

 このため福知山市は5月から過疎集落が多い旧3町の自治会に依頼し、未登録の空き家調査や家主への意向確認に乗り出した。「希望者はいるのに店に商品が並ばない状態を解消したい」(農林管理課)といい、綾部市も今年専任職員を置き、家主に活用を促す。

 また、PR策はホームページのみという市町が大半で、「うちの市を知らない人が検索してくれるのか…」と認知度の低さも懸案だ。人口減の実態と比べ移住者は限られ、費用対効果をめぐり各市町で温度差も大きい。

 地域に迎えても定住に至らない例もある。兵庫県明石市から綾部市の集落に移住したが、1年半後の昨年11月に転出した男性(32)は「農村特有の習慣や人間関係に戸惑う面もあった」と明かし、こう提言する。「移住者は農村が純朴・のどかといった先入観は捨てるべき。反対に農村側も人を呼ぶだけで終わらせず、移住者の文化も尊重し一緒に地域おこしに取り組んで」

集落努力は限界

 舞鶴9万人割れ、福知山8万人割れ、宮津2万人割れ−。2月に発表された2010年国勢調査の速報は、府北部の人口減少に歯止めがかからない現状を浮き彫りにした。

 特に7市町の減少率は府内平均を大幅に超過。人口は総合計画や街づくり施策の基になるだけに行政担当者も頭を悩ませる。

 また、65歳以上が住民の半数を超え、共同体機能が低下する「限界集落」数も、府実態調査(07年)で141のうち中丹80と丹後23で7割以上を占めた。東日本大震災のような災害時、限界集落で高齢者が避難の助けを借りられず取り残される危険性が指摘されており、対策は急務だ。

 ただ、集落自らできる努力は限られている。農林水産省「日本の棚田百選」に認定されている福知山市大江町毛原地区は、都市住民の移住を願って15年前から続けてきた棚田体験ツアーを今年で打ち切ることを決めた。

 移住者は2組(うち定住1組)現れたが、住民は平均約70歳で事前準備や田の管理など負担が重い。水口剛自治会長(68)は肩を落とす。「地区単独ではもう限界。近い将来、棚田の担い手不足が懸念される。別の形で継続できれば良いが…」

「団塊争奪戦」 全国的に激化

 全国では団塊世代の定年に合わせて5年ほど前から、広域連携や民間との協力など積極策を打ち出す自治体が続出、「団塊争奪戦」の様相を呈している。

 「1町では知名度がないが、誰もがイメージできる北海道で売り出そう」。北海道では05年に14市町村が「北海道移住促進協議会」を発足。現在95市町村にまで輪が広がった。首都圏や京阪神で誘致フェアを共同で開いて道庁職員が各種相談に応じたり、百貨店と提携して窓口も設けた。

 青森県は06年、人材派遣会社パソナと提携し、都心の団塊世代を狙い就農希望者の受け入れ事業を展開。島根県は定住財団が5年前から職業紹介に取り組み、利用者だけでも416人の県内移住があったという。昨年から各市町村に定住支援員も配置、県西部の石見地方9市町は独自に連携して勧誘に出向く。

 団塊世代の移住は将来、介護費が増え財政を圧迫するとの懸念もあるが、北海道の協議会の大山慎介統括プロデューサー(48)は「3千世帯が道内に移住した経済波及効果の試算は5700億円と社会保障費など増額分の5倍は大きい」と指摘。「もし移住につながらなくても、住みやすさを競うのだから現住民にとっても良い町になる」と語る。

 近年は短期の滞在体験を呼び水とする勧誘策も目立つ。島根県は今春から県内農林漁業の1年体験希望者に支援費を毎月12万円支給、北海道は賃貸物件を増やし3カ月程度の「ちょっと暮らし」を売り込んでいる。

【2011年6月27日掲載】