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集う

いつか悲しみを整理できるように 「自分だけでない」と知って
「同じ境遇の人の話を聞きたかった」「亡くした子のことを気兼ねなく話題にできる場所だから」。ミーティングに参加する理由はさまざま(大阪市東淀川区)
 男女十数人がテーブルを囲み、順番に自己紹介していった。
 「流産してからは外で子どもの顔を見るのもつらくて、パチンコばかり行ってました。卑屈になっていく自分が嫌で、初めて参加しました」。本来は子ども好きだという女性が涙ながらに語る。若い男性は「娘を亡くして、気持ちの整理がつかないです」と声を振り絞った。
 大阪市東淀川区のJR新大阪駅に近いビルの一室。NPO法人「SIDS家族の会」(事務局・東京)の近畿支部が2、3カ月おきに開いている「ミーティング」でのことだ。

ビフレンダー

 SIDSは乳幼児突然死症候群のこと。ミーティングは会員がボランティアで運営する。特に研修を受けた会員は「ビフレンダー」(友だちになる人)と呼ばれ、自分の経験を元に、SIDSに限らず、流産や死産、新生児死亡などで「わが子の死」に直面した親の悲嘆に寄り添う。
 最近はインターネット上に当事者が交流できるサイトが数多くある。しかし、近畿支部は直接顔を合わせる開かれた場づくりを大切にする。
 「自分の声で体験を話し、ほかの人の話を聞く。参加するには勇気が要るが、『自分だけではない』『笑えるようになるときが来るんだ』と気づいてもらえるのでは」
 支部長の田上(たのうえ)克男さん(56)=大阪府豊中市=はいう。子の年齢・月齢や死因は異なっても、つらい気持ちは共感できるはず。参加できなくても、こういう場所があると知ることが、支えにつながればと願う。
 田上さんは17年前に出生直後の次男を亡くした。「もう一生、笑うことはないと思った」。友人が教えてくれたSIDS家族の会に電話をすると、東京でのミーティングに誘われた。すがるように新幹線で出向き、同じような境遇の人たちに出会い、やがて支える側になった。
 ミーティングに出席するビフレンダーのほとんどが女性だ。田上さんは「夫」や「父親」の立場を代弁する役割も担う。
 悲しみをともに乗り越えるはずの夫婦の間にギャップが生じることがよくある。泣き明かす妻が夫に対して不信感を抱く。涙を見せたことがない、何で会社に通えるのか、ゴルフになんか行くの…。
 父親たちとひざを突き合わせてきた田上さんは「誤解」だという。
 「男だって悲しくないはずがない。こっそり泣いてるんです」

分かち合える

 ある日のミーティング。わが子の四十九日法要をきちんと迎えられるか、不安を口にする夫婦がいた。ビフレンダーたちは「そのころは息をするのもしんどかった」「わたしは四十九日をやった記憶すらないです」などと声をかけた。つらい経験をした者同士だからこそ分かち合える。
 田上さんはよくこうアドバイスする。「われわれだって最初から、こうして元気に話せたわけではない。今も落ち込むことがある。悲しみを忘れたり、封印することはできないけれど、感情を『棚』に整理できるようになるはずです」

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 SIDS家族の会近畿支部 ホームページ〈http://sidskinki.parfe.jp/〉、メール〈sidskinki@parfe.jp〉。次回ミーティングは7月4日午前9時半から、大阪市東淀川区東中島1丁目のココプラザで。

【2010年4月30日掲載】