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行政として

電話相談で精神的にサポート 自助グループつなぐ役目も
赤ちゃんを亡くした家族からの電話を受ける相談員。親身な言葉に、相談者もこころを開く(東京都庁)
 東京・西新宿にそびえる都庁23階の一室。毎週金曜、幼い子どもや赤ちゃんを亡くした人からの電話相談を受けるため、相談員2人が待機している。
 「子どもが眠っているお墓に、雨が降ると傘をさしたくなり、雪が降ると毛布を掛けたくなるんです」−。
 そんな相談に対し、同じような思いをした人だからこそかけられる言葉がある。
 「わたしも夜、暗くなってから傘をさしかけに行ったことがありました。墓泥棒に間違われましたけどね」
 都は1998年から、相談電話を常設している。遺族を精神面でサポートする目的で、行政機関として珍しい事業だ。SIDS(乳幼児突然死症候群)などで子を失った家族らでつくるNPO法人「SIDS家族の会」のメンバーが交代で協力し、保健師と2人で相談に耳を傾ける。

とぎれとぎれの声

東京都の電話相談啓発カード
 相談の多くは、納骨や墓についてや、赤ちゃんを亡くした後の職場復帰のつらさ−など。声はとぎれとぎれで、長時間に及ぶこともある。年間100件を超した年もあったが、自助グループの増加やインターネットの普及もあってか、2009年度は52件だった。
 「電話の9割が子どもを亡くした母親からで、自分を責めたり、周囲の人間関係に苦しんでいることを打ち明ける。相談件数が減っても、やめるわけにはいかない気がする」と浅井倫子・母子保健係長は話す。

カードがきっかけ

 わが子を失った悲しみとどう向き合ったらいいのか。当事者は誰しも戸惑うが、そんな思いを受け止めてくれる先が見つからず、余計につらくなる。
 都は相談電話をホームページで一般に告知している。また、電話番号を記したカード=写真=を作成、母子健康手帳交付時に同封するよう依頼したり、医療機関に配布している。抵抗感を抱く妊婦もいるようだが、相談者の多くがカードをきっかけに電話する。
 さらに、都は保健師や看護師、保育士向けの母子保健研修で毎年、子を亡くした家族への支援をテーマに取り上げている。昨秋は専門職に望むケアについて医師と遺族が講演、約200人が耳を傾けたという。
 こうした取り組みは、各地で徐々に広がっている。
 石川県では県立看護大(かほく市)が年2回、看護職向けに赤ちゃんの死のケアに対する検討会を開いている。また、地元で活動する四つの自助グループをつなぎ、家族が体験を語り合う場として「お話会」を毎月開催。各グループの連絡先が一覧になったチラシも県の助成で作り、医療機関や保健所に配布している。
 担当する同看護大講師の助産師米田昌代さんはいう。「自助グループの存在を知らせるのに、県がかかわると広報しやすい。こういう場があることが大事で、それだけでも家族の支えになるはずと、信じている」

【2010年6月18日掲載】