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過疎に生きる(下)

不利な条件 自然生かし再生へ機運
テレビを見る細見夫妻。画面が乱れ、全く映らないチャンネルもある(綾部市睦寄町古屋)
 「ザーザー」−テレビの画面上を砂嵐が吹き荒れ、ぼんやりと人の顔の輪郭が映る。「はいらんなー」。綾部市睦寄町古屋の細見弘さん(74)はテレビリモコンを操作しながら、妻の恵美子さん(77)と画面を見つめ「雨が降ったら、ちょっと入るが、かんかん照りはあかん」と苦笑する。

砂嵐テレビ

 難視聴地域の古屋。対策として、三世帯が近くの山の上に共同アンテナを立てている。「十年ほど前にアンテナが雪などで折れたようだ。五百メートルほど上にあり、道もないところ。年寄りばかりで、よう上がらん。地上波デジタルになったら映るようになるんかい?」
 一人を除いて六十五歳以上の五世帯七人が暮らす古屋。共同アンテナの運用など含め、集落の共同体としての機能を維持するのが難しくなってきている。一九六五年には五十五人が林業や炭焼きなどで暮らしていたが、現在は年金生活者がほとんど。自治会長を務めて十七年になる細見さんは「シカがみな食べてしまうから山の植林もやめてしまった」といい、近くに住む藤田和子さん(83)は「庭の花もシカは食べる。一番かなわんね」と食害の深刻さを語る。
 古屋のある奥上林地区では年金などを下ろすのに必要な金融機関が二〇〇五年、JAの統廃合で無くなり、奥上林郵便局だけとなった。森井俊朗局長は「郵便局の採算を言われると、まるっきり赤字。民営化され、五年後はどうなるか…」。〇五年には奥上林小も閉校になり、医療機関は週に一回、診療所が開かれるだけだ。
 古屋には食料品を売るJAの移動購買車も入ってこない。携帯電話も圏外。「『ところ貧乏』やが、別に驚かん」と細見さん。また、藤田さんは「古屋へ嫁いで六十年。都会に住む子供が定年になって帰って来てくれるまではと、今は一人で頑張っている。ここは自然が豊かで、空気がきれい。家で使っている山からのお水もおいしい。こんな山奥でも天国や思うてます」と話す。

トチで収入

 綾部市が市東部の限界集落とされる古屋など五集落を「水源の里」として今年四月から条例を施行。特産品開発や定住対策に乗り出し、ようやく光が当たり始めた。その一つが古屋集落の近くにはえるトチの巨木で、秋に採れる実やトチモチを集落の収入源にとの計画だ。
 これまでシカに食い荒らされていた実。巨木を防除ネットで囲み保護した。高齢の住民だけでは難しい急斜面でのネット張りや作業道の整備は、ボランティアや市職員らと一緒に取り組み、今秋はシカから実を守ることができた。細見さんは「少しは日の目が見えてきた」と喜ぶ。
 国土交通省や京都府によると、高齢化率50%以上の集落は全国で七千八百七十三、府内では百四十一にのぼり、府北部に七割が集中している。綾部市で今日から開かれる全国シンポで再生への機運が高まり、国土の均衡ある発展に目が向けられるか注目したい。
【2007年10月18日掲載】