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(2)2010年の問題

農山村の転機 存在訴え
もやに包まれた川沿いの集落。早朝、風がやみ、鏡のような川面が風景を写す(新潟県阿賀町。梶井照陰さん撮影)

 「二〇一〇年農山村問題」。こんな言葉が今、関係者の間で飛び交っている。
 過疎地の整備を進める過疎特措法、集落を維持し、耕作放棄地の増加を防ぐ中山間地域等直接支払制度、自治体再編を促す合併特例新法の三制度が、偶然にも一〇年三月に期限切れを迎えることを指すものだ。
 あと二年。異論、反論はまだないが、「政策のハンドリングを誤ると大変なことになる」と明治大教授の小田切徳美さん(48)は警鐘を鳴らしている。
 理由は過去の更新をめぐる議論にある。「今の過疎特措法ができた時、対策はこれで最後との議論が政財界にあった。直接支払制度も、政府の財政審議会が前回の更新時に廃止を含めた見直しを求めている」
 合併政策の行方も気掛がかりだ。自民党の道州制論議における基礎自治体数は千。もし今の半分近くに自治体を絞り込むことになれば平均人口十万人規模の再編を強いられ、農山村は再度混乱する。
 「現在の財政状況で過疎地だけ特別扱いするのはどうかとの議論が出ても不思議ではない。施策は自動的に延長されるものではないし、ポスト合併特例新法の標的は農山村だ」
 ただ、昨年の参院選で自民党が負けてから農山村への政治的配慮は増えた。本年度予算でも限界集落の支援費に五億四千万円を計上するなど構造改革全盛期に見られた切り捨て論は影を潜めたが、小田切さんは「政治情勢で扱いが変わること自体が異常」という。
 確かに一九九八年参院選から自民党の方針は都市政党化だった。「農山村は食料やエネルギーを生産できる国内戦略地域。政治に左右されない存在として安定的に見守らないといけない」
 二〇一〇年は、農山村を支えてきた昭和一けた世代が後期高齢者になる年でもある。残された時間で、農山村の必要性、重要性をどう訴えるのか。
 幸い昨秋には、過疎集落を持つ百四十以上の自治体が「全国水源の里連絡協議会」を立ち上げ、当事者側の声を上げ始めた。
 「政治よりも国民への働き掛け。鍵は国民的な合意づくりにある」と小田切さんは話す。

【2008年5月3日掲載】