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(3)「劣った」地域

制度に隠された可能性
トラックに商品を載せた移動商店。狭い山道を1時間も歩いて買い物に来るお年寄りもいる(東京都檜原村。梶井照陰さん撮影)
 山村振興法は文字通り中山間地域や農山村の振興を目指す法律だ。しかし、趣旨とは裏腹に同法が定義する山村とは「経済、文化的に恵まれず、生活文化水準が劣った地域」だという。
 「今までの政策は、中山間地域を農業だけとかある一面で判断して、地域全体の可能性や良さをとらえていなかった。典型がこの定義だ」
 こう指摘するのが、元農水官僚で農山村再生を産官学で支援する「中山間地域フォーラム」事務局長の野中和雄さん(66)だ。
 野中さんは、法律や政策と中山間地域の実態にさまざまなギャップがあるという。
 例えば農業政策。米作りを中心に考えているため、平地の水田と比べれば中山間地域にある農地の条件は悪いとされるが、標高が生育の要因になる花卉(かき)や野菜などを見れば一概に不利とはいえない。
 イメージにも溝がある。田舎生活を望み、あこがれを抱く都市の住民は多いが、法律は中山間地域の「遅れ」を指すばかりだ。
 「中山間地域には、観光もあれば移住、高齢者の生きがいになる福祉的な面もある。学者や実務者を交え、地域を総合的に考えることが大事だ」
 だが、平成の大合併により個別の集落に行政の目が届きにくくなった。人員も削減され、後継者の有無や労働環境まで把握して農業指導や活性化を支援してきた市町村職員もいなくなった。その上、高齢化も進み、集落は自信を失っている。
 野中さんは「今こそ国は、中山間は大切な地域だとメッセージを発信すべきだ。住民も外部の目や支援を活用して地域を見つめ直してほしい」という。
 幸い、農産物直売所の売り上げは一カ所平均で約一億円に達し、国産材の価格も上がってきた。活性化の意欲につながるはずだ。
 官僚時代、条件の厳しい中山間地域を熱心に歩いたという野中さん。「田舎に行きたい、住みたいという底流を生かしたい。農山村の魅力を伝えたい。そして、住民が自信を持って活性化に取り組む姿を見たい」との思いを募らせている。

【2008年5月4日掲載】