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(5)夜明け前

都市と農村協定 命守る
道路脇に座り、世間話をするお年寄りたち。畑、野菜の出来栄え…。話題は尽きない(山梨県笛吹市。梶井照陰さん撮影)

 中国山地のど真ん中、島根県飯南町。田園風景が広がるこの町に、全国で唯一、過疎集落や農山村をめぐる問題を研究している県の「中山間地域研究センター」がある。
 取り組んでいる研究は、高齢化や土地利用、公共交通、鳥獣害など過疎地が共通して抱える課題ばかり。行政や住民を交えた分野横断型で対策を練り、社会実験もしている。
 「中国地方には、山の奥まで集落があり、小規模高齢化が進んでいる。でも、中山間地の問題は夜明け前だと思っている」。こう話すのは地域研究グループ科長の藤山浩さん(48)だ。
 理由は都市の限界にある。都市を支えてきた輸入食料や資源は価格高騰や品不足にさらされ、コミュニティー意識が希薄な近郊団地では、今後十年で一斉に住民が高齢化し、孤独死など社会危機が頻発する恐れが高まる。
 これを視野に藤山さんが提案するのが、都市住民が農山村と「生命保険」のような協定を結ぶことだ。
 放棄された農地や山林に先行投資すれば、十−二十年後に安全な食料を供給し、災害時には一定期間受け入れる疎開協定も結ぶ。「都市でも田舎でも、どちらに住んでも資源と食料は共通の課題。そこに保険をかけるのは生き方の幅を広げる上で意味がある」
 ただし時間はない。今や中山間地にいる農業従事者の六割が七十歳以上だ。今後十年で農山村を支える住民は大幅に減り、一気に田畑が荒れ、集落が崩壊する可能性が高い。さらに、土地や家屋は相続されても多くが都市に住む不在地主だ。
 藤山さんは、農山村に外部からつなぎ役を入れる時期だという。「内部の住民ネットワークが減ると、鳥獣害対策や祭りなど助け合って支えてきた作業が崩壊する」
 昨年度、センターが行った実験では、島根県内の二地域に大学生やNPO(民間非営利団体)関係者など外部の人を投入し、空き家の改修や休耕地の復興などを実現した。
 過疎集落や農山村を守ることは、都市部を含む人々の暮らしを守ることにつながる。「間に合わせないといけない」と藤山さん。決意は固い。(おわり)

【2008年5月6日掲載】