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綾部市に寄せられた空き家の問い合わせ 653件

農村暮らしを始めませんか
兵庫県明石市から綾部の古民家に移り住んだ櫨山さん一家。地域の輪に溶け込み田舎暮らしを満喫している(綾部市十倉中町)

 綾部市の人口は5月1日現在で3万6073人と、5年前に比べ約2000人減った。過疎高齢化に歯止めをと市は、農業体験イベントなどを開催しているNPO法人「里山ねっと・あやべ」などと連携し都市農村交流に力を入れている。2年前には移住希望者に空き家の紹介などをする「あやべ定住サポート総合窓口」を設け、これまでに空き家に関する問い合わせが653件あった。移住希望者を受け入れる態勢づくりに地域の再生がかかる。

 653件のうち京阪神や滋賀県からが521件と大半を占める。245件は里山ねっとを経由したものだった。すでに653件の中の31件・82人が空き家を見つけ、綾部で生活を始めている。

 兵庫県尼崎市出身の松波泰治さん(61)=栗町=も今年4月に移住した。海釣りが趣味で、自然や大都市への交通の便の良さが決め手だった。「尼崎にも海釣りをする宮津にも近い。暮らしに必要な大半が整い、ほどよい田舎らしさがある」と綾部の魅力を語る。

 都市との交流から移住・定住促進へのステップアップには、市や住民の過疎高齢化に対する強い危機感がある。市は、限界集落とされる集落の活性化を目指し2007年に全国に先がけて水源の里条例を施行するなど、都市住民の呼び込みに力を注ぐ。

 一方で、移住に関する多数の問い合わせに対し提供できる空き家が少ないという課題も横たわる。市がつかんでいる市内の空き家は現在約380軒あるが、ホームページで市があっせんしている物件はわずか8件。都市に住み、盆や正月の帰省時や退職後のUターンに備え賃貸を拒む家主も多いという。

 移住者と古くからの住民のトラブルを懸念する家主もいる。市の奥上林地区では、空き家の紹介に際し家主や自治会との決まり事などの事項を事前に移住希望者に説明している。自治会連合会の熊内輝夫会長(67)は「地域活性には移住者の力が必要。都市との生活の違いを理解してもらいミスマッチを防ぎたい」と話す。

 昨年5月に兵庫県明石市から妻(34)、長男(1)と移住した櫨山哲明さん(31)は「都会との小さな違いが新鮮で興味深い。住民にいろいろ教えてもらえる」と綾部での生活を満喫する。

 櫨山さんと同じ自治会で暮らす川端勇夫市自治会連合会長(66)は、受け入れる住民サイドの意識の変化もあげ「過疎化が激しく、よそからの人に対する期待が大きくなった。互いに特別扱いしないことが大切」という。

 市は今年4月に綾部での定住支援に特化した定住促進課を新設。空き家の活用について地域活性化や防犯などの利点を広くアピールする一方、6月定例市議会に提案する一般会計補正予算案にも、空き家の売買や賃貸契約が成立した家主に1物件につき報償金5万円を支給する事業費を盛り込んだ。

 さらなる定住促進へ新住民のノウハウやネットワークの活用も織り込んでいる。深刻な過疎脱却へ挑戦は続く。

【2010年6月12日掲載】