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被災地の鉄道  住民の足どう守るのか

 西日本豪雨の被災地の多くで、鉄道の復旧が進んでいない。
 国土交通省によると、全国で最大115路線が運転を休止した。その後復旧した路線もあるが、被害が甚大だった広島県などを中心に21路線が未復旧だ。
 中には運転再開まで1年以上かかる見通しの路線もある。
 生活再建に被災者の「足の確保」は欠かせない。JRなどの事業者は、早期復旧に努めてほしい。
 このうち芸備線、福塩線、木次線は全線復旧に1年以上、呉線の一部区間も来年以降となる。大動脈の山陽線は11月の見通しだ。
 京都では、線路の土台が流失した京都丹後鉄道の宮舞線(宮津-西舞鶴間)が動いていない。
 運休に伴い、夏休みを繰り上げた高校や、社員を自宅勤務にした企業もある。元の生活に戻るのには時間がかかりそうだ。
 鉄道復旧には多額の費用がかかるが、採算面で厳しい路線も少なくない。住民の足を守りながら、持続可能な交通の在り方を探る動きが出てくることも予想される。
 今回、寸断された鉄道網の代替輸送手段として新幹線やフェリーが注目を浴びている。特に通常の100倍近い5千人超が押しかけている広島-呉航路のフェリーは朝夕に増便までする特需ぶりだ。
 思いがけず存在感を発揮した形だが、旅客船業界は燃料高や船員の高齢化で経営は楽ではない。今後も災害時に代替手段であり続けられるかどうかは疑問だ。
 非常時の代替交通の確保策は普段から検討しておく必要がある。維持すべき交通機関を想定するなら平時の利用支援などコスト面も含め、地域の交通に組み込む議論を進めなければならない。
 復旧の遅れが、被災者の鉄道離れを加速させないかも気になる。車利用などにシフトする人が増えれば、ますます採算悪化を招き復旧の必要性を薄れさせる。
 過去には台風で被災したローカル線が廃線に追い込まれている。一昨年の熊本地震や昨年の九州北部豪雨でも、被災した鉄道の一部が今も再開していない。
 北海道では、JRが「単独では維持困難」とした路線が台風被害で不通になったまま、存続が見通せなくなっている。
 鉄道という形で維持することが必要かも含め、地域の実情に即した交通の在り方を遅滞なく議論することが重要だ。
 自然災害による長期間の運休が、路線切り捨ての大義名分にされるようでは困る。

[京都新聞 2018年07月20日掲載]

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