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首相、真珠湾へ  悲痛な歴史に区切りを

 安倍晋三首相が米国ハワイの真珠湾を訪れることになった。
 日米開戦の発端となった地で、現職首相が戦争犠牲者を慰霊するのは初めてだ。米国人の心に響く訪問を実現して、日米の悲痛な歴史に区切りをつける大きな一歩になることを願う。
 米国では「ひきょうな奇襲」として悪名高い1941年の旧日本軍による真珠湾攻撃から、あす8日で75年になる。安倍氏は「二度と戦争の惨禍は繰り返してはならない。その未来に向けた決意を示したい」と語り、今月26、27日にハワイを訪問する意向を明らかにした。オバマ米大統領と共に真珠湾内のアリゾナ記念館でそろって献花する。
 安倍氏が「日米の和解の価値を発信する」と意気込むように、訪問には太平洋戦争で戦火を交えた過去を互いに乗り越えた日米同盟の重要性をアピールする狙いが読み取れる。
 オバマ氏は今年5月、伊勢志摩サミットに合わせ、現職米大統領として初めて被爆地広島の平和記念公園で原爆慰霊碑へ献花した。原爆投下の正当性を否定することになるとの米国内の懸念に抗して自ら掲げる「核兵器なき世界」の理念を訴えた。
 大統領職を離れるオバマ氏への「返礼」の意味合いもあるのだろう。戦後71年が経過し遅きに失したとの感が否めないものの、広島に続いて同様に象徴的な場所である真珠湾を両首脳が共に訪れることは両国に残るわだかまりを解きほぐすことになる。
 ただ歴代首相が真珠湾での慰霊に踏み切れなかったのは、日米開戦の責任を一方的に認めることが「謝罪外交」と批判されるのを警戒したためだ。このため訪問の目的は謝罪ではなく、あくまで「犠牲者への慰霊」と強調する。
 安倍氏は昨年4月、米連邦議会で演説し、先の大戦への「痛切な反省」や「深い悔悟」を表明した。支持基盤とする保守層の反発は根強いとはいえ、一歩踏み込んで戦争へ突き進んだ過去への反省を真摯(しんし)に示すべきではないか。双方が互いに過去を認め合ってこそ信頼がいっそう深まると考えたい。
 安倍氏の真珠湾訪問によって、先の大戦が中国や韓国など多くの国に強いた犠牲者に対する慰霊も外交課題に発展する可能性がある。とりわけ日中間では「南京大虐殺」の犠牲者数を巡る対立が歴史認識問題として横たわる。だが日本が堅持する平和主義の道筋を確かなものとするには、米国以外への対応も避けて通れまい。

[京都新聞 2016年12月07日掲載]

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