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終盤国会  うみを出し切れるのか

 会期末まで残り1カ月を切った国会で、与野党の対決姿勢が強まっている。委員長の職権を使った強気の国会運営で法案審議を加速させる与党に対し、野党は閣僚の不信任決議案の提出などでブレーキをかける構えだ。
 心配なのは、日程をめぐる駆け引きが激化する中で、肝心な点がおろそかになることだ。法案の中身の徹底審議、そして一連の不祥事の真相解明である。
 先週、環太平洋連携協定(TPP)の承認案が、野党を押し切る形で衆院本会議に緊急上程され、与党などの賛成多数で可決された。今月11日に委員会審議が始まってわずか1週間。法案の内容は米国離脱前とほぼ同じとはいえ、最初の法案も国内農家や消費者の懸念を置き去りにしたまま、強引に採決した経緯がある。審議を短縮していい理由にはならない。
 政府・与党はトランプ米政権の通商圧力をかわす「盾」にする狙いから、TPPの承認案と関連法案の成立、11カ国での協定発効を急ぐ。働き方改革関連法案についても、日本維新の会と修正合意を経て週内に衆院を通過させる構えだ。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案の今国会での成立も描く。
 一方、「数の力」で劣る野党の対抗手段は限られる。与党主導の国会運営を足止めし、時間切れによる廃案を狙う。茂木敏充経済再生担当相の不信任決議案を提出してTPP関連法案の審議中断に持ち込んだのに続き、働き方法案に絡んで加藤勝信厚生労働相の不信任案も検討している。
 論点未消化のまま審議を切り上げる、不信任案の連発で審議を空転させる-。そのどちらも、国民が本来望むところではない。とりわけ、働き方改革の焦点である「高度プロフェッショナル制度」とカジノ解禁には、人々の関心と批判的な目が向けられているだけに、論戦が中途半端に終われば政治不信は増すだろう。
 国会日程が窮屈になったそもそもの原因は、森友学園や加計学園、自衛隊日報をめぐる問題で公文書の改ざん、隠蔽(いんぺい)、答弁矛盾が噴き出し、審議の前提が崩壊したことにある。回復の責任は第一に、政府と与党にある。
 「うみを出し切る」と安倍晋三首相は約束した。国民の信頼を取り戻せるかは、今国会中の取り組みにかかっている。
 不祥事の究明は後回し、与党の看板政策に関わる法案成立はゴリ押し-という姿勢は許されない。

[京都新聞 2018年05月21日掲載]

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