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環太平洋連携協定(TPP)参加をめぐる議論が大詰めだ。 野田佳彦首相は、12日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を控えた10日にも交渉参加の態度を表明するという。 だが、民主党内での反対は根強く、参加に向けた党の意見集約もできない状況に陥っている。 TPPは、今後の日本の産業構造を一変させかねない大きな変革をもたらす貿易の枠組みだ。与党内すらまとめられない状況で参加表明することには危うさを感じる。 何より、参加の是非を判断するのに必要な情報が乏しい。農業をはじめ保険、郵政など広範な影響が心配されているが、政府は具体的な対応策を示せていない。 疑問点が解消されないまま交渉に加わっては禍根を残す。現時点での交渉参加は再考すべきだ。 国会議員の間には、党派を超えて反対論が広がっている。参加見送りを求める国会決議を目指して署名活動を始めた議員もいる。 世論も割れている。共同通信の調査(5、6日)では、交渉参加への賛否が拮抗(きっこう)した。「分からない」が4人に1人に上っている。 TPP交渉に参加するメリットや生活へのデメリットが分からず国民も迷っているようだ。 菅直人前首相が参加を打ち上げたのは1年も前だ。この間、政府は想定される影響と、具体的な対策についての説明を怠ってきた。 特に、最大の問題とされる農業への打撃に関する不安は、ほとんど払しょくされていない。 政府は先月、農地のさらなる大規模化を促す戸別所得補償改革を打ち出したが、米国やオーストラリアと戦える規模とはいえない。 関税撤廃で流入する安価な農産品の影響を緩和するのに1兆円を超える追加補償が必要との試算も出ているが、財政負担についての議論が始まったわけでもない。 輸入される牛肉の対象や遺伝子組み換え食品の表示方法の変更を求められ、食の安全が脅かされる可能性も指摘されている。 保険適用と適用外の診療を併用する「混合診療」の全面解禁や公的医療制度も交渉の対象になりうることが明らかになってきた。 一方、TPPの経済効果は政府試算でも「10年間で2・7兆円」程度にとどまり、具体的なメリットを実感しにくい。 現状では、得られる利益より不安のほうが大きいのではないか。 TPP参加によって日本がこう変わるというビジョンを政府は描けていない。世論の後押しも乏しい。とても自信を持って各国と交渉に臨める状況ではあるまい。 今後、日本はどう生きていくか-の国民的議論が不可欠だ。そうした過程もないまま、行き先不明のバスに飛び乗るべきでない。
[京都新聞 2011年11月09日掲載] |