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イレッサ判決  副作用情報の公開重要

 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用被害をめぐり、死亡した患者3人の遺族が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は国と製薬会社アストラゼネカの賠償責任を認めた一審東京地裁判決を取り消し、遺族の訴えを退けた。
 副作用の間質性肺炎の危険性を注意する添付文書の妥当性が主な争点となり、高裁は「文書に欠陥はなかった」と判断した。遺族は判決を不服として上告を決めている。
 これまでに東京地裁は「文書の記載が不十分」として、ア社に行政指導しなかった国の責任も認めた。大阪地裁はア社の責任を認めたが国の責任は否定。3種類の判決が示されることになった。審理中の大阪高裁判決に注目したい。
 判決を分けたのは、薬と副作用の因果関係をめぐる判断だ。
 英大手製薬会社が開発したイレッサは2002年7月、輸入承認された。ア社は添付文書の「重大な副作用」欄に間質性肺炎を記載したが、死亡が相次いだため、国の指導で緊急安全性情報を出して「警告」欄を追加、死亡の恐れがあると記載を変更した。
 承認を得るための「治験」で死亡例はなかった。治験外使用では7例のうち3例が死亡している。この事実から東京、大阪地裁は、承認時に副作用の危険性を認識できたと判断した。東京高裁は「死亡はがんによる可能性もあり、イレッサ投与との因果関係があるとはいえなかった」と否定し、因果関係を厳格にとらえた。
 薬害や公害では、因果関係の立証に膨大な時間がかかる。他方、製薬会社のような重大な健康被害をもたらす可能性のある企業が、安全対策により重い責任を負うのは当然だ。高裁の判断には疑問を持たざるをえない。
 厚生労働省は、海外で使われている医薬品が日本では承認に長い時間がかかる「ドラッグ・ラグ」の解消に力を入れている。抗がん剤に副作用は避けられず、製薬会社や国の責任を厳しくすると、新薬承認がそれだけ遅れると主張する。一刻も早く新しい治療を求めるがん患者らの声も理解できる。
 薬の有用性と副作用の危険性に関する情報を公開し、医師だけでなく患者も納得して治療法を選択できるようにすることが重要だ。
 その際、専門的知識のない患者や家族でも分かりやすい内容にする必要がある。新薬承認にあたっては、医師向けの添付文書だけではなく、患者向けの周知方法についても国は検討すべきだ。
 国は両地裁が促した和解を拒否した。その一方で、原告側が求める抗がん剤による副作用被害の救済制度や、添付文書への国の責任を明確化する薬事法改正などの検討を始めている。訴訟とは別にして早急に具体化してもらいたい。

[京都新聞 2011年11月17日掲載]

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