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福島県内の農家1戸が生産したコメから国の暫定基準(1キログラム当たり500ベクレル)を超す放射性セシウムが検出され、同じ地区でことし収穫されたコメについて、政府が原子力災害対策特別措置法に基づく出荷停止を県に指示した。 東京電力福島第1原発事故後、肉牛やシイタケ、野生キノコの出荷停止はこれまでにもあったが、コメの出荷停止は初めてのことだ。この農家が収穫したコメは市場に流通しておらず、すべて廃棄処分される。まずは、冷静に事態を受け止めたい。 農林水産省は8月に、コメの放射性物質を収穫前後の予備調査と本調査の2段階で行うことを決めている。福島県内では、第1原発周辺の11市町村で今年のコメ作付けはしていない。残る48市町村の1174地点を調査した結果、基準値を上回った地点はなかった。これを受け、福島県の佐藤雄平知事は先月12日に県内産コメの「安全宣言」を出している。 セシウムは、福島市大波地区の農家が自主的に行った検査で検出された。当該農家が収穫した840キログラムの一部を念のために地元の農協に持ち込んだところ、玄米1キログラム当たりの暫定基準値を超える630ベクレルのセシウムが検出された。 大波地区は市中心部から数キロ離れた山あいにある。放射線量が周辺より高い「ホットスポット」として避難勧奨の対象になった伊達市の地区に隣接している。水田は山間にあり、山の沢水を使っていたため、周囲の放射性物質が蓄積した可能性があるという。 問題なのは、県の調査がこの地区の農家154戸のうち、収穫前に水田1カ所、収穫後は2カ所だけを対象にした抽出検査にとどまったことだ。 セシウムは玄米の胚芽などぬか部分に蓄積され、精米すると6割が取り除かれるといわれる。しかし、消費者の不安を考えると、検査対象を広げて、徹底した情報公開を図るしかない。 抽出調査の限界が分かった以上は、水田ごとの全量検査の実施を求めたい。加えて、検査結果は消費者の手に渡る段階で、詳しい産地とともに、たとえ基準値を下回っても検出数値を表示することを検討する必要がある。検査を加速するため、簡易分析器の配置も進めてもらいたい。 半年後には、来年のコメ作付けが始まる。決め手は除染作業となるが、完了までに数年以上かかるとみられる。コメ農家の不安は大きい。問題になった水田の土壌分析と周辺の環境、放射性物質の蓄積状態について、詳しい調査を急いでほしい。これまでに得た知見も総合して、国は最も効果的な農地の除染手法や除染の優先順位を早急に定めるべきだ。
[京都新聞 2011年11月19日掲載] |