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米軍属裁判権  運用改善では不十分だ

 在日米軍で働く技師らの米国人民間人「軍属」が公務中に起こした事件、事故について、米国が刑事訴追しない場合、日本で裁判できるようにした日米地位協定の運用改善に両国が合意した。
 米側の事情で、日米双方で訴追されない異常事態が続いていただけに、その解消に見通しが立ったことは一定評価できよう。しかし、長年、不平等が指摘されている犯罪容疑者の取り扱いの抜本的な是正にはほど遠い。地位協定の改定は不可欠である。
 地位協定は、軍人、軍属の裁判権について、公務中は米側に、公務外は日本側にあると規定する。軍人は軍法会議で裁く制度があるが、平時に軍属を軍法会議にかけるのは違法との米連邦最高裁の判例があり、2006年ごろまでは日本に裁判権を委ねてきた。
 その後、米国で裁判を行う法整備がなされたが、制度上の不備などで起訴した例はなかった。06年から11年10月までに、公務中の軍属による交通事故は計62件あったが、懲戒処分程度で事実上不問に付されてきたのが実態だ。
 今年1月、19歳の男性が死亡した交通事故で、自動車運転過失致死罪に問われた軍属について、那覇地検は「公務中」を理由に不起訴処分にした。那覇検察審査会は「公務の認定が不十分」などとして起訴相当を議決。男性の遺族や友人らが、処分の不当性を訴える活動を展開、日米両政府は改善に向けた協議を続けていた。
 合意内容で、米側が訴追しない場合、日本側は30日以内に裁判権行使に同意するよう米側に要請。同意が得られれば日本で裁判ができる。被害者が死亡するなど重大事件、事故では米側が「好意的考慮を払う」とも定めている。那覇地検は米側の同意を得て、この軍属を同罪で在宅起訴した。
 ただし、一次的な裁判権はあくまで米側にあると確認しており、米側の裁量で裁判権が決まる構造である。公務の認定も米側が行っている。地位協定の差別的な構造は何ら変わっていない。
 在日米軍の軍人、軍属の事件、事故をめぐる捜査や裁判をふり返ると、沖縄など基地を抱える地域住民の反発を、運用改善で抑えようとする歴史が繰り返されてきた。
 1995年に起きた米兵による女子小学生暴行事件で、県民あげての抗議行動を受けて、米側が起訴前の容疑者の身柄引き渡しに合意したが、その後も身柄引き渡し問題は再三繰り返されている。政治的な思惑で司法手続きが左右される懸念はぬぐえない。
 今回の合意には、普天間飛行場移設問題の進展につなげたいとの思惑も透けるが、沖縄県民が納得できるはずがない。政府は腰を据えて抜本改定に臨むべきだ。

[京都新聞 2011年11月26日掲載]

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