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福井再審決定  証拠の全面開示は急務

1986年に福井市で女子中学生が殺害された事件の裁判で、名古屋高裁金沢支部が再審を開始する決定を出した。殺人罪で懲役7年が確定、服役した前川彰司さんが満期出所後に裁判のやり直しを求めていた。
前川さんは捜査段階から、一貫して犯行を否認していた。犯行に結びつく物証は少なく、複数の知人の証言が主たる証拠だった。
裁判では、この証言の信用性が争点となった。一審福井地裁は、知人の証言に変遷や重大な矛盾があるとして、無罪判決を言い渡した。一方、控訴審で名古屋高裁金沢支部は「ささいな変遷」と判断して証言の信用性を認め、逆転有罪判決とし、最高裁も上告を棄却した。
再審請求審では、検察側が初めて開示した複数の供述調書や遺体の解剖写真などの新証拠が決め手となった。決定は、新旧の証拠を総合的に検討したうえで、現場に残された包丁以外にも凶器が存在する可能性や、犯行後に前川さんが乗ったとされる車から、知人の証言通りに血液反応が出なかった事実を指摘。「証言は信用性に疑問を抱かせるに十分」として、犯人と認めるに合理的な疑いがあると結論づけた。
検察側が被告に有利な証拠を隠して、有罪を誘導したと判断されてもやむを得ない事態だ。再審無罪となった「布川事件」でも、検察側が有罪立証に不利な証拠を開示しなかったことが明らかになっている。
裁判員裁判の実施に伴い、公判前に争点を整理する手続きが導入され、以前よりも証拠開示は進んだといえる。しかし、検察側がどのような証拠を持っているのか分からない。未開示の証拠の特定は難しく、弁護側にとってハードルが高い。
今回の再審請求審でも、検察側は弁護側の請求を拒み続け、裁判所の異例の勧告で、ようやく開示した経緯がある。
公正な裁判の実現のため、検察側に証拠を全面開示させるよう義務づけるルールづくりを進めなければならない。
取り調べの可視化の拡大も急務だ。大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽(いんぺい)事件などをきっかけに、容疑者取り調べの録音・録画が一部始まっている。しかし、厚生労働省文書偽造事件で無罪が確定した村木厚子さんは、検察官の強引な取り調べでつくられた同僚の供述調書で逮捕、起訴された。今回の再審開始決定にも、同じ構図が見えないだろうか。
容疑者の取り調べはもちろん、関係者の聴取にも、録音・録画を全面的に導入して、適正な捜査だったかどうか、検証できるような制度を実現すべきだ。

[京都新聞 2011年12月05日掲載]

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