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原発賠償指針  さらに住民の声に耳を

文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が、東京電力福島第1原発事故後に政府が避難指示を出した区域以外の福島県の被災者に対する賠償指針を決めた。被ばくへの懸念で自主避難したか、とどまったかは問わず、慰謝料のような形で一括して賠償するものだ。
だが、人によって被害の状況は異なる。それを反映させない一律賠償には不満の声が上がる。東電は今後、具体的な賠償方針を策定するが、あらためて住民の声に耳を傾けることを忘れてはならない。
賠償対象は県内23市町村。原発や警戒区域からの距離に加え、放射線量や避難した住民の数などを複合的に考慮したものという。
審査会が中間指針で政府指示による避難への賠償方針を決めたのが8月。当初から自主避難も対象になり得るとみながら、4カ月を要したのは、政府の基準やモデルとなる判例が乏しかったからだ。
審査会は避難の実態調査や当事者からヒアリングを踏まえ、自主避難の有無にかかわらず賠償するよう求めた。除染作業は11月末から国のモデル事業として警戒区域で始まったばかりで、被ばくへの不安はなかなか消えないのが実情だ。地元に残っても将来は見通せない。手探りの中、審査会が被害を広くとらえた点は評価したい。
だが、金額は「賠償」と呼ぶには不十分だ。被ばくの影響を受けやすい妊婦と18歳以下の子どもで一人40万円、その他の住民については一律8万円にとどまった。
審査会は過去の損害賠償請求訴訟の判例などからはじいたとするが、根拠は明らかでない。それが当事者の不満を増幅させている。
非政府組織(NGO)が今秋実施したアンケートによると、自主避難した人の約6割が、家族などが福島にとどまる二重生活を送っているという。引っ越し代や避難先の家賃などかかった費用は平均約72万円。避難は心身、家計に重い負担を強いている。京都や滋賀といった遠隔地ならなおさらだ。
一方、避難しなかった場合でも自宅など身の回りの除染に出費はかさむ。賠償というなら、実損に応じて支払われるのが筋だろう。
なぜ23市町村だけなのかの理由も、対象外となった人からみれば説得力を欠く。
東電は今回の指針を、あくまでも「最低基準」と受け止めるべきだ。指針の数字が独り歩きし、住民の声が無視されるようでは賠償の名に値しない。
8月の中間指針に基づく賠償請求が始まっているが、作業は難航している。背景に、福島県二本松市のゴルフ場の除染経費をめぐる訴訟などで見せた、放射能汚染に対する責任逃れの姿勢がないか。
東電は重い責任を自覚し、具体的な賠償方針の策定に当たっては個別の事情を反映すべきである。

[京都新聞 2011年12月08日掲載]

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