|
政府のエネルギー・環境会議のコスト等検証委員会が電源別の発電コストを算定した。原子力は最低でも従来試算より約5割高い1キロワット時当たり8・9円。今後、膨らむことが確実な福島第1原発の廃炉や事故の賠償費用を考慮すれば火力並みのコストになる。政府や電力会社が推進の根拠としてきた経済面での原子力の優位性は失われたといえよう。 今回の試算は、事故の賠償費用のほか、建設費や安全対策費、地元対策の立地交付金などの政策費用を勘案したのが特徴だ。政府が2004年に示した試算では5・9円だったが、これらの経費を上乗せした結果、コストは大きく跳ね上がり、石炭火力9・5円、液化天然ガス火力10・7円とほぼ同じ水準になった。 事故の損害賠償、除染費用などは現時点で6兆円弱と見積もったが、確定していないことから、最低限のコストという扱いだ。 巨額の政策費用などを含まない算定のあり方には疑問が多かっただけに一定の評価はできる。ただし、発電コストは手法によって算出幅が大きく疑念はぬぐえない。 検証委員会の委員でもある立命館大の大島堅一国際関係学部教授が、過去の実績から試算したコストは10・68円で火力や水力を上回る。事故の賠償費用を含めれば、さらに高くなるのは確実だ。 事故の対策費用がどこまで膨らむのか、いまだ不透明だ。算定方法の検証を含め、今後もコスト算定に注目する必要がある。 今回の試算は現状と2030年の見通しを算出している。火力は燃料費の上昇に伴い、コストが上がると予想しているが、自然エネルギーの最低コストは太陽光で半分から3分の1に下がる。陸上風力は30年に8・8円、地熱は8・3円になり、原子力や火力と対抗しうると評価している。 試算をまとめた報告書は、政府が来夏に策定するエネルギー基本計画の基礎資料となる。コスト面をみても、「脱原発依存」を加速し、自然エネルギーの普及政策を推し進めるべきなのは明らかだ。 こうした中、国会でヨルダンなど4カ国に日本の原発輸出を可能にする原子力協定が民主、自民などの賛成で可決、承認された。 野田佳彦首相は「事故の教訓と経験を国際社会と共有し、原子力の安全性向上に貢献することが日本の責務」と説明したが、国内では「脱原発依存」を掲げながら、国外への原発輸出再開を急ぐ姿勢は矛盾する。 日本が果たすべき役割は、原発に依存しないエネルギー政策のモデルを示すことにある。エネルギー基本計画の策定にあたり、野田首相はいまだ明確でない「脱原発依存」への考えを示すべきだ。
[京都新聞 2011年12月15日掲載] |