社説 京都新聞トップへ

ステップ2完了  事故収束にはほど遠い

政府は東京電力福島第1原発の原子炉1~3号機が一定の安定をえて「冷温停止状態」になったと判断した。野田佳彦首相は事故収束に向けた工程表「ステップ2」の完了と事故収束を宣言した。
一部が圧力容器から溶け落ちたと予想される燃料の回収終了や、施設の解体撤去、 廃炉までを見据えれば、さらに30~40年がかりの取り組みが必要だ。作業は新たな技術の開発も含めて難航が予想され、真の「事故収束」にはほど遠い。
収束宣言には、今なお避難生活を続ける周辺住民はもちろん、多くの国民が納得できないだろう。
ただ、収束宣言の会見で野田首相が述べたように、今後は、周辺地域の生活再建に向けた環境整備や放射能の除染などの取り組みが大きな課題となるのは事実だ。
住民の被ばく、健康被害を出さないことを最優先に、避難解除への政府の取り組みの加速化が求められるのは言うまでもない。
「ステップ2」完了で、政府は住民避難区域の見直しを本格化する。現在の「警戒区域」と「計画的避難区域」のうち、年間の被ばく放射線量が20ミリシーベルト未満と比較的低い地域は、除染を進めて地元自治体と協議した上で、早ければ来春にも区域指定を解除、住民の帰宅を目指すとされる。
避難解除の基準が年間20ミリシーベルトとなったのは、長期間の低線量被ばくの健康影響を検討する政府の作業部会の提言を基にしたのだろうが、やや違和感を覚える。
国際放射線防護委員会は、緊急事態後の段階では住民の被ばく線量を年間1~20ミリシーベルトにする目安を示している。しかし、低線量被ばくの影響については、専門家でも意見が分かれる。国際的な放射線防護の考え方は、被ばく線量に「これ以下は安全という値はない」という前提で「合理的に達成可能な限り低く」というのが原則になっている。
国はこれまで、生涯累積放射線量の上限を100ミリシーベルトとし、校庭などで屋外活動を制限する放射線量を「1ミリシーベルト以下を目標とする」などとしてきた。
一日も早く家に戻りたいという住民の希望はあろうが、被ばくリスクの許容範囲は年齢などによっても異なる。特に幼い子供を持つ住民などには不安が募るだろう。
被ばく線量の目標や避難区域の見直しが広く受け入れられるためには、健康リスクの説明だけでは不十分だ。まず政府は、徹底的な除染で、可能な限り住民の健康リスクの軽減に努めるべきだ。
さらに、野田首相も触れたが、住民に対する健康調査・管理を継続していくことが重要だ。住民の納得を得られる、きめ細かい対策を明示した上で、避難解除を進めてほしい。

[京都新聞 2011年12月17日掲載]

バックナンバー