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厚生労働省は、希望する従業員全員に65歳までの再雇用を企業に義務付ける方針を固めた。 現状のままでは年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、60歳の定年後、無収入になる人が出る恐れがある。それを防ぐのが狙いで、方向性に異論はない。 一方で長引く不況の中、企業の経営を圧迫したり、若者の就業機会を奪うとの指摘もある。政府が老後の安心や雇用確保に努めるのは当然だが、企業や労働組合も知恵の出しどころではないか。 現行の高年齢者雇用安定法は、60歳の定年に達した従業員について、定年の延長や撤廃、再雇用によって原則65歳まで雇用を継続するよう企業に義務付けている。 ところが、厚労省の調査によると、希望通り65歳まで働ける企業は5割にも満たない。特に大企業では24%にとどまっている。 企業の多くが定年延長などではなく、再雇用の道を選んでいるためだ。というのも再雇用の場合、労使の合意があれば、採用基準を設けて対象者を限定できる仕組みとなっているからだ。 基準の中身をみると、働く意欲があるかどうかや勤務態度といったあいまいなものが多い。一部の人しか再雇用しない理由付けに使われているのが実情といえる。 例外規定となっているこの基準を撤廃しようというわけだ。 会社員らが加入する厚生年金の支給開始年齢が引き上げられることを考えれば当然ともいえる。 すでに始まっている定額部分は2013年4月に65歳への引き上げが完了。同時に報酬比例部分も60歳から61歳へ引き上げられる。 それ以降、60歳の定年退職後に再雇用されないと、賃金も年金もない「空白期間」が生じることになる。それではたまらない。 根っこには04年の改正で「100年安心」をうたいながら、今や破綻もささやかれる年金制度の問題がある。自公政権時の制度設計や経済見通しの甘さに加え、改革を掲げながら一向に進まぬ民主党政権の責任は重い。 一義的には雇用拡大につながる成長戦略が求められるのも確かだ。だが円高やEUの現状をみれば一朝一夕にはいきそうにない。 「活力がそがれ新卒採用にも影響がでる」など企業側の反発は強いが経験と技術力を持つ高齢者の活用で業績を伸ばしたケースも少なくない。再雇用支援制度の充実とセットで前向きにとらえたい。 非正規従業員のこともある。働く側も仕事を分かち合う「ワークシェアリング」の導入を本気で考える時期かもしれない。 高齢化と人口減が進む中で、社会保障や雇用はどうあるべきか。再雇用の義務化は日本の将来をも問いかけている。
[京都新聞 2011年12月18日掲載] |