社説 京都新聞トップへ

日韓首脳会談  懸案乗り越える努力を

野田佳彦首相と韓国の李明博大統領との首脳会談がきのう、京都で行われた。経済連携協定(EPA)締結交渉の再開などでは一致したものの、従軍慰安婦の問題をめぐる認識の隔たりは大きく、重い歴史を背負ってきた日韓関係の難しさも浮き彫りにした。
会談のかなりの時間が費やされたのが、慰安婦問題だった。大統領は「優先的に解決する誠実な勇気を持つ必要がある」と強い調子で述べ、日本側に対応を求めた。前日の在日韓国人との懇談会でも問題に言及しており、経済的実利をより重視して直接言及を避けてきたこれまでの姿勢とは一変した。
背景には日本との交渉を強く迫る憲法裁判所の違憲判断と、少女像設置を契機とした元慰安婦に同情的な国内世論の高まりがある。
今年8月、韓国の憲法裁判所は元慰安婦の請求権をめぐり政府が具体的な措置を講じてこなかったのは違憲との初判断を下した。今月14日には、元慰安婦の支援団体がソウルの日本大使館前に被害女性を象徴する少女像を設置した。
これらをきっかけに韓国国内の世論は硬化している。首脳会談で問題提起しなければ「憲法違反」との突き上げに遭うのは必至だ。
与党候補が敗れたソウル市長選をめぐる内紛や実兄の秘書らが関わる疑獄事件もあり、残り任期1年余りとなった大統領の求心力低下は著しい。来年4月に総選挙、12月に大統領選を控え、世論に配慮せざるを得なかったのだろう。
日本政府は、植民地支配に関する個人請求権は日韓国交正常化の際の協定で解決済みで、元慰安婦もこれに含まれるとの立場だ。野田首相も会談で日本の立場をあらためて伝えたが、一方で人道的見地から努力する考えも示した。
村山内閣の1995年、元慰安婦への「償い金」支払いなどを目的に基金が設けられた。役割を終えたとして07年に解散したが、高齢化が進む元慰安婦への支援は課題として残る。日本政府は水面下で要望を聞く努力を続けてきたがなお知恵を絞る必要があろう。
そのほかの議題は時間切れの感が強い。2004年以来中断しているEPA交渉については再開で一致したが、時期は示されず、前回会談からの進展はないに等しい。
環太平洋連携協定(TPP)交渉参加の弾みとしたい日本、日中韓自由貿易協定(FTA)を見据える韓国、双方にとって日韓EPAは重要だ。交渉は曲折も予想されるが、粘り強く臨む必要がある。
北朝鮮の脅威をめぐる防衛協力や拉致問題…。日韓が緊密に協力すべき課題は多く、互いに重要な隣国であることに変わりはない。未来志向の関係構築のため、懸案を乗り越え、大局的見地から歩み寄る努力が双方に求められよう。

[京都新聞 2011年12月19日掲載]

バックナンバー