|
子どもが自ら命を絶つ悲劇を防ごうと、文部科学省は本年度から自殺の実態調査にひときわ力を入れるとともに、小中高校での予防教育のあり方についての検討を始めた。 痛ましい出来事を繰り返さないためには背景を的確に把握して、詳しく分析することが欠かせない。その上で対策を導き出し、子どもの心への影響に十分に注意を払いながら予防教育へと結びつけることを望みたい。 文科省によると、2010年度の児童生徒の自殺は147人で、ここ数年は年間150人前後で推移している。しかし、学校を通じての集計ということもあり、警察庁統計の500~600人台(19歳以下)より少ない。 10年度では児童生徒が「置かれていた状況」(複数回答可)として、家庭関係、進路、学業不振、友人関係、いじめ、教職員との関係での悩みなどが挙げられているが、半数以上が不明だった。 このため、文科省は今年6月、自殺と断定したケースだけでなく可能性があれば、死亡に至る背景をすべて挙げて報告することなどを通知した。 教育現場に通知が浸透すれば、これまで以上に綿密な報告がなされ、実情をつかめる手がかりを得られるにちがいない。 これと併せ、文科省は医科大教授、弁護士、中学校長、小学校教諭らによる有識者会議で本年度から2カ年の予定で自殺予防教育のあり方の検討を進めている。 学校ではこれまで命の大切さについての教育は行われてきたが、さらに一歩踏み込み、予防教育に焦点を当てて調査研究し、討議しているのが特徴だ。 米国の高校には、自殺予防教育が健康教育の中で行われているところがある。事前に教員への適正な研修と合意がなされ、保護者に説明して同意を得ているという。プログラムとして、生徒たちが▽友人の危機に敏感に気づく▽誠実な態度で関わる▽信頼できる大人に状況を伝える大切さなどが強調されているそうだ。 日本で自殺を授業で取り上げるのは、児童生徒を刺激する可能性があると懸念する教員や保護者もいるだろう。しかし、児童生徒は学校外でさまざまな情報を得ている。誤った知識ではなく、正しく学ぶことが必要ではないだろうか。 日本全体の自殺者が年間3万人を超える今、自殺予防教育は在学中だけでなく、大人になった際にも周囲で悩んでいる人に気づき、支援につながる可能性がある。 教育の中身をどうするか、教員や保護者間の理解と協力、地域医療機関との連携なども課題だ。有識者会議には、ぜひ具体策を打ち出してもらいたい。
[京都新聞 2011年12月19日掲載] |