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拉致問題  手詰まり打開の契機に

北朝鮮の金正日総書記死去を受け、野田佳彦首相はオバマ米大統領と電話会談し、北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向けて協力を求めた。
行き詰まり状態にあるこの問題を前に進めるには、韓国も含めた3カ国の連携強化が欠かせない。
自民党の福田康夫政権だった2008年、日朝両国が拉致被害者に関して再調査することで合意した。だが日本側の首相交代などもあって頓挫し、放置されたままになっている。
北朝鮮は拉致問題について「解決済み」と主張してきた。新しい指導体制下でも、そう簡単に方針が変更されるとは考えにくい。
後継者と目される金正恩氏の権力基盤固めを最優先し、当面は日本との問題に目を向ける余裕などないだろう。
北朝鮮を脱出した元工作員らの証言によると、外国人拉致を指示したのは金総書記だとされる。そうであれば、死去によって解決に向けた交渉の余地が生まれないとも限らない。
見方によっては事態打開の機会ともいえる。拉致被害者の家族からも、先行きへの不安とともに、政府に解決の糸口を見つけてほしいとの声が起こっている。
少なくとも、これまでのような相手の出方待ちでは、何も進まない。問題進展の契機にしようという積極姿勢が必要だ。
その前提となる日米韓の連携には不安材料も抱える。米国とは沖縄の普天間飛行場移設問題、韓国とは従軍慰安婦問題という火だねがくすぶっている。
とはいえ、これらの課題を克服しながら3カ国の情報共有と協調を強めるほかない。米韓に対し、日本にとって拉致問題の解決こそきわめて重要であることを繰り返し説得する必要もある。
その上で、北朝鮮に強い影響力を持つ中国の関与を求め、6カ国協議の再開につなげたい。拉致問題だけを切り離した解決は現実的に難しい。あくまで核・ミサイル問題とともに包括的解決を模索すべきだろう。
北朝鮮の動向は、先行き不透明だ。新体制づくりの過程で不測の事態も起こりうる。
当面は冷静に動きを見きわめる必要があろう。対話と圧力が基本であることに変わりはない。ただ状況により対話が重要になることもありうる。相手側のメッセージを注意深く読み取る努力が要る。
民主党政権になってから、時間が止まったように拉致問題で進展がない。関心が薄いのではないかとの印象すら持つ。被害者家族らの声を誠実に受け止め、北朝鮮政策を再検討するとともに、事態の進展に即応できる態勢を早急に整備してほしい。

[京都新聞 2011年12月21日掲載]

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