|
大阪市の橋下徹市長が、「大阪都」構想の実現に向けたプランを矢継ぎ早に打ち出している。 区長の公募、府市の水道事業一元化、市営地下鉄民営化-。国政の停滞ぶりを見慣れた目には、このスピード感が新鮮に映る。 「府市統合本部」を立ち上げた橋下氏は28日、市議会で演説し、「大阪から日本を変える」と都構想推進に強い決意を示した。 大阪都構想には不明な部分も多いが、二重行政の解消など大都市が抱える課題を掘り起こして改革案を示す積極性は評価したい。 100年余の歴史を持つ大阪市を解体・再編する、戦後の地方制度史上に前例のない「壮大な実験」である。しっかりした制度設計と住民への十分な説明が不可欠だ。 統合本部が示した工程表では、大都市制度を議論する府市一体の協議会を来年4月に設置し、必要な法改正を国に働きかけたうえ2014年の通常国会で地方自治法改正を目指す。さらに住民投票を経て、15年春に「大阪都」をスタートさせるという。 ただ、構想実現には多くの懸念がある。水道事業統合で料金を平準化すると、大阪市内では値上げになる可能性が指摘されている。 病院やバス、地下鉄の経営形態見直しでは、民営化で不採算部門が切り捨てられないか心配だ。 市民生活に関わる大きな制度変更を伴うなら、十分に議論を尽くし、理解を得る努力が必要だ。 いまの行政区を再編して設ける予定の特別区と大阪都との関係についても未確定の部分が多い。 特別区はどんな権限を持つか、財源調達や配分の仕組みはどうなるのか。特別区への議会設置で、かえってコストが膨らむ、との問いにも答えなければならない。 大阪都という「枠組み」づくりが先行しているのも気になる。橋下氏は「統治機構を変えれば大阪は活性化する」と主張しているがその根拠は分かりにくい。 都構想で何がどう変わるか。具体的な説明があいまいでは、手段が目的化してしまいかねない。 都構想は「上からの改革」という側面が強い。制度設計にあたっては住民の声を反映させる場が必要だ。強権的で攻撃的な手法が話題になる橋下氏だが、異論を封じて突き進むようでは困る。 大阪都構想の具体化は、政令指定都市のあり方にもさまざまな問題を投げかけている。特に、基礎自治体としては大きすぎ、民意が届きにくいとの指摘はしっかり受けとめていく必要がある。 京都府や京都市にとっては、自治について自己点検するチャンスだ。人口の6割が京都市に集中し、二重行政の解消も課題だ。大阪の改革から学べる点があるなら大胆に採り入れる度量がほしい。
[京都新聞 2011年12月29日掲載] |