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一体改革素案  社会保障の見直し不足

 政府・与党は、消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることを柱とした「社会保障と税の一体改革大綱素案」を正式決定した。
 厳しい国の財政状況を踏まえれば、社会保障制度の維持に負担増が避けて通れないのを国民もおおむね理解するところだ。素案が消費税率の引き上げ幅と時期を明示したことで、改革に向け一歩踏み出したと受け止めたい。
 消費税増税について、昨年末の世論調査で反対が約6割と、導入論議が具体化するにつれ国民の目は厳しくなっている。大きな理由に所得の低い人ほど負担感が増す「逆進性」が挙げられている。
 素案では逆進性対策に、税金の還付と現金給付を組み合わせた「給付付き税額控除」の導入が明記された。国民の不安や注文に配慮しなければ納得は得られまい。法案の成立までには、同様の柔軟できめ細かい対応が必要になる。
 素案の決定には、財政再建を最重要視する野田佳彦首相の強い決意が大きな力となった。だが、一体改革と言う以上、増税だけでなく、社会保障のあり方を議論し、具体的な改革、見直しに踏み込むことが不可欠だ。高齢化などで毎年1兆円ずつ増える給付を消費税増税で賄い続けられるのか、という指摘はもっともだ。その点で素案は物足りない。
 社会保障改革では、本来より2・5%高い年金支給額の「特例水準」を12年10月から3年かけて引き下げることが盛られた。一方で医療保険の70~74歳の患者負担割合を本来の2割に戻す給付抑制策は見送られるなど、全般に「高齢者に手厚い」と言われる現行制度の課題の先送りが目立った。
 世論調査で消費増税への反対が増えたのは、国民の負担が増す一方で、暮らしの将来像が見えないからではないか。特に若年層に、増税後の社会保障制度や財政の展望をきちんと示すことが大切だ。
 若い世代への負担の公平性も配慮しつつ、医療、年金、介護の保険料と税負担とのバランスをどうするか、議論が必要だ。
 政府は20年度までに国と地方の基礎的財政収支の黒字化を目標にした。消費税増税は「国際公約」と受け止められている。国債の信用力を保つためにも財政健全化への意志と姿勢を堅持せねばならず、素案の決定は評価できる。
 内閣府の試算では、15年度に消費税率を10%にしても基礎的収支の黒字化は難しく、さらに7%程度の増税が必要という。
 税金の使い道全般に切り込み、歳出構造の改革が欠かせない。素案には、増税前に国会議員定数や国家公務員人件費の削減の実施が盛られた。まず政府・与党はそれらを実現しなければならない。

[京都新聞 2012年01月07日掲載]

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