社説 京都新聞トップへ

成人の日  社会動かす力になろう

 黒い大津波がかけがえのない故郷と人々をのみ込んだ。大量に漏れた放射性物質が健康や食への不安をかきたてる。
 東日本大震災と原発事故という未曽有の悲劇のただ中にあって、未来への希望の光を見た。被災地に飛び込み、寝食を忘れ、利害を超えて被災者に寄り添った若いボランティアだ。
 「内向き志向」「ひ弱」「欲がない」といった言葉では表せない、頼もしい若者像が浮かび上がる。高度成長を背景に競争に明け暮れた「団塊の世代」やブランド志向の「バブル世代」にはない、新しい価値観が広がっているように感じる。
 「成人の日」のきょう、京都府で2万5308人、滋賀県で1万4916人が大人の仲間入りをする。人生の新たなスタートラインに立った皆さん、おめでとう。
 皆さんが生きてきた歳月は「失われた20年」と呼ばれる。バブル経済がはじけ、不況は今なお出口が見えない。ユーロ危機で世界経済の先行きも不透明だ。今秋から就職活動という大学生には「超氷河期」の就職難が待ち受ける。
 一方で少子高齢化が進み、国と地方の借金(長期債務残高)は本年度末で937兆円に膨らんだ。1人当たり780万円にもなる。新成人の皆さんが明るい未来を描くことが難しいのも当然だ。
 こうした事態を招いたふがいない大人の責任は重いが、有権者となった皆さんも政治に目を向け、社会のあり方を考えてほしい。
 年金と医療の負担が増えて財政が行き詰まり、政府は消費税を増税する方針だ。20歳になれば月1万5千円ほどの国民年金保険料を払わねばならない。遠くに見える国の「税と社会保障の一体改革」だが、皆さんの暮らしや将来の生活設計と大いに関係する。
 大阪では若者たちが橋下徹氏率いる「大阪維新の会」の旋風を巻き起こした。皆さんの一票で政治は動かせるという証拠だ。
 時代は閉塞(へいそく)感に満ちているが、それを言い訳にせず、自らの力で人生を切り開く気概を持ってほしい。道標になる曲がある。シンガー・ソングライターたかはしべんさんの「世界はあなたを」だ。
 <忘れないでください 君のなかの勇気を 君のなかの正義を 強く生きる力を 君のなかの愛を 君のなかの夢を あなたの幸せを みんなの幸せを…あなたの勇気を揺り起こしてください 世界はあなたを待ち続けています>
 人がもともと持っている心のなかの正義感を眠りから呼び覚まそう。そんなメッセージだ。
 社会に出れば、汚いこと、目を背けたいことにも出合うだろう。つらいこともあるはずだ。そんなとき、自分の「芯(しん)」を見つめ、真っすぐに歩んでほしい。

[京都新聞 2012年01月09日掲載]

バックナンバー