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原発40年制限  「延命」の口実にするな

 政府は、原発の運転期間を原則40年に制限し、東京電力福島第1原発事故のような「過酷事故(シビアアクシデント)」対策を法令で規制することなどを柱とした原子炉等規制法の見直し案を発表した。
 新たな規制の枠組みは、電力事業者が第一義的に災害防止措置を講ずる義務があると明確化し、原発の運用条件を厳格化した。福島の事故の教訓を踏まえれば当然のことだ。
 現在は定めのない原発の運転期間に一定の制限を設けて法律で規定するのは、安全性確保の観点から前進だろう。ただ、40年という基準は、根拠がはっきりしない。
 国内では現在、運転開始後30年を超えた原発は19基、うち3基は40年を超えている。運転開始から30年を迎えると10年ごとに健全性を評価し運転継続を認めている。だが、初期の原発の耐用年数については安全面から30年を超えた継続運転に専門家から疑問の声が出ている。
 原発の「心臓部」である原子炉圧力容器は中性子を浴び劣化するとされる。こうした問題で多くの専門家が目安として指摘する年数など具体的根拠がなければ、基準は説得力を持たない。
 例外として電力会社から申請があった場合、条件を満たせば一定期間の運転延長は認めるとしている。条件に施設の経年劣化の評価などを挙げているが、具体的な判断基準があいまいで、なし崩し的に延長される恐れがある。
 新たに規制行政を担当する原子力安全庁(仮称)は、規制の根拠や運転延長の際の認可基準を明瞭に示さなければならない。
 それ以前に電力会社と距離を置いた審査体制である必要がある。
 地震や津波に関する知識など最新の科学的知見を技術基準に取り入れ、既存原発も新基準への適合を義務付ける「バックフィット」制度の導入も盛る。
 この運用基準も明確にしていくことが肝心だ。
 個々の原発で災害や事故のリスクを徹底的に洗い出す指針を作り、安全性に問題があれば廃炉にする仕組みもいる。
 また今回の見直しでは、原子力基本法に、原子力安全の確保は「放射線による有害な影響から人と環境を守る」ために行うと規定される点が、特に重要だ。
 野田佳彦首相は、昨年9月の就任記者会見で「寿命が来た原発は廃炉にする。新設は無理」と明言した。その考え方を具体的に推し進めるのが今回の見直し案といえる。
 事故や不祥事の後も既存原発を温存してきた経緯を反省し、「脱原発依存」の方向性を確かなものにしてほしい。

[京都新聞 2012年01月10日掲載]

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