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君が代訴訟判決  強制や懲戒はなじまぬ

 学校行事で君が代を起立斉唱しなかったため懲戒処分を受けた東京都の公立学校教職員約170人が処分の取り消しを求めていた裁判で最高裁第1小法廷は、停職や減給などの処分について過重で違法との初判断を示した。
 最高裁は昨年5月、君が代の起立斉唱を求める職務命令が憲法19条の保障する「思想良心の自由を間接的に制約する」と認めながらも、目的や内容から総合的に合憲と判断していた。
 今回の判決はそれを踏襲し、懲戒処分を都教委の裁量権の範囲内として認めつつ、職務命令に基づく懲罰の運用に一定の制限をかけたといえる。戒告処分を「懲戒の中で最も軽く、直接の不利益はない」として容認する一方、停職や減給には慎重な考慮を求めた。
 この基準に照らせば、不起立など職務命令違反3回で分限免職にできるとする大阪府の教育基本条例案は違法となる恐れがある。判決を受けて松井一郎知事は条例案を見直す意向を示した。当然のことで、再考すべきだ。
 小法廷の裁判官5人のうち、唯一判決に反対した宮川光治裁判官は「不起立は信念に起因し、非行・違反行為とは次元が違う。違法性は顕著に希薄」と指摘し、戒告でも重すぎると述べた。この意見を真摯(しんし)に受け止めたい。
 そもそも、命令による君が代斉唱の強制や懲戒処分は、自ら考えることを生徒に教えるはずの教育現場にふさわしくない。桜井龍子裁判官が補足意見で述べたように「自由闊達(かったつ)な教育」を実現するには、国や教委が強制せず、現場に任せる寛容さと度量が必要なのではないか。
 学校現場での日の丸掲揚・君が代斉唱はこの10年で急速に広がった。1999年の国旗国歌法制定時、小渕恵三首相は「義務づけは考えていない」と説明したにもかかわらず、学習指導要領に盛り込まれ、都教委は起立斉唱を義務づける通達を出した。こうした上から現場への一方的な圧力が、現場の教職員の反発を招いたのは当然とも言えよう。
 国旗や国歌を敬い、愛国心を持つのは国際的な常識だという主張がある。しかし同時に、過去の戦争にまつわる経緯から、日の丸や君が代に敬意を持てないという考えを持ち、表明する自由も尊重されなくてはならない。
 職務命令については「個々の教員の思想のあぶり出し」(右崎正博・独協大法科大学院教授)に使われているという批判もある。
 間もなく卒業式や入学式のシーズンを迎える。懲戒処分をちらつかせた強制ではなく、多様な考え方に接し、尊重し合えるような式典にしてほしい。判決がその一助になることを願う。

[京都新聞 2012年01月18日掲載]

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