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施政方針演説  決意聞けても視界不良

 消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革、その前提である政治・行政改革に演説の3分の1を費やした。
 野田佳彦首相の並々ならぬ決意の表れと言えるだろう。「重要課題を先送りしてきた『決められない政治』から脱却する」と力がこもってもいた。
 ただ、いくら力を入れても、野党が対決姿勢を変えない限り、前に進まないのが現実だ。
 施政方針演説は、時の政権が年初の通常国会でその年の基本政策を示すものだ。その中で、自公政権の福田康夫、麻生太郎元首相の演説を引用したのには驚いた。
 「ねじれ国会」で苦しんだ元首相が、与野党の話し合いを訴えたのを持ち出し、「今こそ『政局』ではなく、『大局』を見据えよう」と野党に呼びかけたのだ。
 しかし、当時の民主党は協議に消極的だったはずで、かえって野党の反発を招きかねない。課題先送りの責任は、協議に応じない野党にあるよう見せかける思惑なら、浅ましい限りだ。
 一体改革は、消費税率を2015年までに2段階で10%へ引き上げるとし、「社会の希望を取り戻す第一歩を踏み出せるかどうか」の成否がかかっていると強調する。
 一方で、行革は「不退転の覚悟」だという。独立行政法人改革や公務員制度改革、国家公務員給与8%引き下げなどを掲げるが、「身を切る改革」としては物足りない。演説で国会議員の歳費削減を打ち出さなかったからだ。
 最優先課題に、東日本大震災からの復旧・復興や福島第1原発事故への対応、日本経済の再生を挙げている。この1年に限らず、中長期にわたって取り組んでいくべき課題だ。
 「復興を通じた日本再生」「新しい日本を作り出すという挑戦」という言葉は見られるが、それ以上のビジョンが語られなかったのは残念だ。震災・原発事故・超円高を乗り越えるチャレンジは、世界に新しいモデルを示すことになる。そんな気概が、復興を担う政権リーダーに欲しい。
 原発依存を「最大限に低減させる」と言う一方で、「失われた原子力安全行政に対する信頼回復」を追求する。原発事故が突きつけた問題を深く考えているのか、疑問を抱かざるを得ない。
 最後に野田首相は演説のトーンを上げた。「今年は、日本の正念場」としたうえで、国会議員に再び訴えた。課題先送りの誘惑に負けない。次の選挙ではなく、次の世代を考え抜くのが「政治家」。こうした言葉がむなしくなるのかは、通常国会の与野党議員の言動で分かってくる。
 もちろん、訴えた野田首相本人にも返ってくることだ。

[京都新聞 2012年01月25日掲載]

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