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他国に銃弾提供  原則の骨抜き許されぬ

 2年前にスーダンから分離独立したばかりの南スーダンで再び武力衝突が始まった。軍が内部分裂し、民族争いに発展している。死者は数百人に上るという。
 こうした中、安倍晋三政権は緊急の国家安全保障会議(日本版NSC)を開き、陸自の銃弾を初めて外国軍に提供した。国連南スーダン派遣団に参加している韓国軍の銃弾が切れたため、要請を受けて国連平和維持活動(PKO)協力法の「物資協力」規定を適用するという。
 しかし「物資」の規定はあいまいだ。イラクやアフガニスタン、ハイチなどに向けた過去の実績をみると、難民向けのテントや毛布といった生活必需品や医薬品、建設機材など民生品ばかり。武器・弾薬をこうした「物資」に含めることには無理がある。
 戦闘行為の当事者となりうる外国軍への銃弾の供与は、武器輸出を全面的に慎むとする「三原則」に反し、憲法の平和主義に抵触する恐れが強い。政府は「一刻を争う事態であり、緊急の必要性・人道性が極めて高い」とするが、戦後の長い時間をかけて築き上げてきた国のあり方を、なし崩しで骨抜きにすることは許されない。
 自衛隊は侵略に対する専守防衛のための組織である。国際貢献や「積極的平和主義」といった大義名分をかざしても、海外での戦闘行為やその支援に道を開くことは現行憲法下では許されない。政府はあらためて肝に銘じるべきだ。
 南スーダンにはPKO第5次要員として陸上自衛隊大久保駐屯地(宇治市)や福知山駐屯地(福知山市)からも隊員が派遣され、道路などインフラ整備に携わっている。国際協力機構(JICA)も農業支援などに取り組んでいる。
 今のところ、日本人が被害にあったという情報はないが、政府は不測の事態に備え、全力で邦人の安全確保に努めてほしい。
 背景には複雑な民族対立と政争がある。当初、最大民族ディンカのキール大統領に対し、2番目に多いヌエルのマシャール前副大統領がクーデターを企てたとされたが、真相ははっきりしない。
 首都ジュバで始まった戦闘は地方に拡大し、反乱軍は北部油田地帯を確保したとの情報もある。オバマ米大統領は「軍事力を使った権力掌握の試みは国際社会からの支援を終わらせる」と警告。アフリカ連合(AU)も和平に向けて仲介に乗り出す構えだ。
 戦闘が長引いて内戦化すれば、大勢の難民が発生する。辛酸をなめるのは女性や子どもたちだ。国際社会の働きかけが実を結び、一刻も早く戦闘がやむことを祈る。

[京都新聞 2013年12月24日掲載]

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