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屋外広告物条例  試される景観守る決意

 京都市の屋外広告物条例が7年間の猶予期間を終え、きょうから完全施行される。建物の屋上看板や点滅照明の広告物は全面禁止、掲示できる広告物も大きさや色彩への厳しい制限が本格化する。
 全国的にも類例のない条例だ。完全施行を機に京の街並み景観への関心をいっそう高めたい。
 街中では、すでに巨大看板や道路への突き出し看板が姿を消しつつある。派手な色彩が特徴のチェーン店の屋外看板も、地味な色合いやデザインに変更された。落ち着いた雰囲気の街並み形成に貢献しているように見える。
 条例は、古都の眺望を守るため市内全域で建物の高さやデザインを規制する新景観政策の一環。2007年9月に施行され、市は違反看板の撤去を求めるなどの是正指導を進めてきた。
 ただ、完全施行直前の7月時点でも市内に約4万5千ある屋外広告物の違反は2割に上った。企業活動に影響する看板類の規制に、事業者の理解があまり得られていない現状をうかがわせている。
 違反看板の撤去費用が自己負担となることへの反発に加え、市の指導を「寝耳に水」と受け止める事業者も少なくなかった。条例の内容について、市は十分に説明を尽くしたのだろうか。
 まちづくりには市民の幅広い合意が欠かせない。違反事業者にも条例の趣旨をしっかり伝え、納得してもらう努力が必要だ。
 屋外広告物への規制強化で、屋内の窓ガラスの内側から外に向けて宣伝物を掲げる屋内広告物が新たな課題となっている。許可を基本とする屋外広告物と違い、屋内広告物は届け出制にとどまる。条例の適用には曖昧な部分もある。
 市は屋外広告物と同様に規制する必要性を訴えており、検討を進めていくという。しかし、建物内の広告にまで規制の網をかけることは表現の自由にも関わる問題をはらむ。十分な議論を求めたい。
 京都に店舗を構える企業の中には、社屋を町家風に新改築し、景観に溶けこませることで好印象を得ている事例も増えている。
 大きく目立つ看板を掲げるだけが宣伝ではないという新たな発想が生まれてきたようにもみえる。こうした意識の変化が、街並み維持につながるよう育ててほしい。
 条例は、企業活動などに一定の制約を課してでも古都の景観を守っていこうという決意の表れだ。京都の街並み維持に条例が必要な理由をどう継続的に訴えていくのか。市の姿勢も試されている。

[京都新聞 2014年09月01日掲載]

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