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基地環境調査  円滑な返還に欠かせぬ

 沖縄県などにある在日米軍基地の環境調査に関する日米の新しい協定締結協議で、双方の主張に食い違いが出てきた。
 基地を返還する際、3年前までに立地自治体の職員などの立ち入り調査に応じるように求めた日本の提案に米国が難色を示している。
 駐留米軍の法的地位を定める日米地位協定は、米国に基地の環境保全を一切義務付けていない。
 新協定の協議をめぐり、日米は10月下旬に「実質合意した」と発表したが、大きな焦点になった立ち入り調査で米国側の理解を得ていない実態が明らかになった。主張のずれの背景には、今週初めに行われた沖縄県知事選を前に、基地負担軽減の成果を出そうと焦る日本政府が、形だけの合意にこだわった姿勢が見え隠れする。
 在日米軍基地の4分の3近くが集中する沖縄の県民にとって、米軍基地縮小に向けた返還と移設は悲願である。返還の前提となるのが事前の基地内の環境調査だ。米軍基地が地元に返還されても、基地に有害物質が残され、土壌汚染が懸念されれば、跡地利用が円滑に進まないからだ。
 事実、沖縄県では米軍基地の返還後に土壌汚染が判明するケースが後を絶たない。2003年に返還された南部のキャンプ桑江(北谷町)の汚染問題は住民の強い怒りを招いた。
 跡地からヒ素や鉛などの有害物質が大量に検出され、一部の基地跡地は現在も利用可能な状態に戻っていない。今春には、宜野湾市などのキャンプ瑞慶覧(ずけらん)の埋蔵文化財調査で米軍が廃棄したとみられるドラム缶十数本が見つかり、内容を検査する騒ぎも起きている。
 1960年代末からのベトナム戦争の出撃拠点となった沖縄の基地に米軍が保管していた猛毒のダイオキシン類を含む枯れ葉剤による汚染を危ぶむ声も大きい。当時の沖縄は米国の施政下で、元米軍兵士などの証言で、枯れ葉剤を土中に投棄した実態も指摘される。
 危険物質の確認と除染に必要な時間を考えれば、沖縄県側が「譲れない一線」として求める返還前の早期の立ち入り調査は当然の願いである。米国側は「早くても返還の半年程度前」を主張しているという。日本側に調査権限を与えすぎると、基地の運用に影響が及ぶと判断していると考えられる。
 これでは実質合意にほど遠い。政府はあらためて米側と環境調査の実施時期を煮詰めるべきだ。返還の前提となる3年前までの立ち入り調査の実現は譲れない。

[京都新聞 2014年11月22日掲載]

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