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暴力団の脱税  資金源絶つ意義大きい

 上意下達のピラミッド型の強固な組織を背景にする暴力団を壊滅する足がかりにしたい。
 福岡県警が、北九州市に本拠を置く特定危険指定暴力団工藤会のトップら4人を所得税法違反の疑いで再逮捕した。傘下の暴力団組員から集めた2億円を所得として申告せずに隠し、約8800万円を脱税した疑いが持たれている。
 上納金は暴力団が用いる独特の集金システムとされる。地域に根を張る末端組織から上位の組織が順番に資金を吸い上げ、それぞれの組織を維持している。ひそかにやりとりされる上納金を暴力団の所得とみなし、所得税法違反で立件するのは全国で初めてだ。
 資金源を絶つことは従来から暴力団取り締まりの狙いだったが、個別の犯罪捜査では限界がある。暴力団組織を縦に貫く資金源に迫ることは捜査の本道といえ、組織壊滅に欠かせない。
 上納金を納めるため、中間組織から末端にいたるまで、組員は資金源を求めて、あらゆる不法行為に手を染めている。違法薬物の密売をはじめ、賭博や売春、オレオレ詐欺を行い、用心棒代の名目で市民から脅し取った金銭も資金源にしている。いずれも、組員による犯罪の動機につながる。
 市民の安全な暮らしと社会の安定を守るためにも、上納金という反社会的システムにメスを入れた今回の捜査は大きな意義がある。今後の捜査では、上納金の詳しい実態や構造、背景にまで切り込んでもらいたい。
 工藤会は、暴力団追放運動に加わる市民や企業を標的に幾つかの殺傷事件を起こした疑いがある。昨年秋の最高幹部の逮捕以来、警察庁が全国の警察力を集中して捜査と市民の安全確保に当たってきた。すでに、最高幹部は殺人罪など複数の事件で起訴されている。
 脱税容疑は、金庫番のメモ類や押収した預金通帳で裏付けたという。これまでの捜査では、上納金は組員から1カ月に数万~数十万円集め、最高幹部に少ない月でも1千万円以上集まっていたことが確認できるという。
 暴力団対策法ができて、24年になる。社会全体での暴力団排除の機運もあって、近年は構成員が減少傾向にあるとはいえ、なお組織に関わる人員は5万人を超している。
 当面は警察と検察、国税当局が連携し、緒についた脱税事件の立証に向けた証拠固めに全力を挙げてもらいたい。さらに、捜査手法を全国に広め、他の暴力団組織にも適用することも重要だ。

[京都新聞 2015年06月23日掲載]

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