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自衛隊市民監視  情報収集の見直し必要

 自衛隊の情報保全隊がイラク派遣反対集会に参加した市民を監視したのは違憲として、東北6県の住民が国に監視差し止めと1人当たり100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は違法性を認め、男性1人に10万円を賠償するよう国に命じた。
 一審判決に続く違法性の指摘だ。防衛省は情報保全隊による情報収集を根本から見直すべきだろう。
 2日の控訴審判決は、男性が公表していない本名や勤務先などの情報を収集され、「プライバシーを侵害された」と判断。反戦ライブ活動をしていた男性について「自衛隊員や家族に影響があるとは考えにくい。本名などを探索する必要性は認めがたい」とした。
 一審判決は、氏名や職業、思想信条に直結する所属政党などの情報を収集された男性を含む5人の人格権を侵害したとして、計30万円の賠償を国に命じた。内容は後退したが、防衛省と自衛隊は重く受け止めるべきだ。
 情報保全隊は自衛隊の秘密情報を守ることなどを任務とする防衛相の直轄部隊で、約千人の要員がいるとされる。自衛隊員が外部の不審者と接触していないかを調べ、自衛隊への攻撃に対する事前の情報収集も行うが、攻撃する意思を持たない国民を監視することは不当だ。
 秋田市の成人式会場周辺でイラク派遣に反対する街頭宣伝をした元教諭の女性は、活動内容や明らかにしなかった氏名が、情報保全隊が作成したとされる文書に載っていた。仙台高裁での「見えないものに監視されている恐怖感でいっぱいになった」との意見陳述は当然だろう。
 安全保障関連法の成立によって今後、自衛隊の海外派遣に対する反対集会などが増える可能性がある。参加者の個人情報を収集し、監視を通じて圧力を加えるような行為は、表現の自由を脅かしかねず決して許されない。
 情報保全隊による情報収集は、共産党が2007年に同隊の内部文書だとして公表した資料により明らかになった。特定秘密保護法に基づき、防衛関連の多くが特定秘密に指定され、情報保全隊の活動がこれまで以上に国民から見えにくくなる恐れがある。
 衆参両院には特定秘密保護法の運用状況をチェックする情報監視審査会が設けられている。国会は審査会の権限強化などを通じ、情報保全隊の情報収集が不適切なものにならないよう、しっかり監視していくべきだ。

[京都新聞 2016年02月06日掲載]

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