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もんじゅ見直し  廃炉を決めるしかない

 相次ぐミスから運転停止したままの高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、計画に基づいて今後10年間運転すると、国費4千億~5千億円の追加支出が必要になると政府が試算していることが分かった。
 着工から31年、もんじゅは実質の運転期間は250日しかないのに、これまでに国費1兆円以上を投じている。実用化のめどは見えず、再稼働には最新鋭の原発1基を建設できる額に等しい資金が必要と判明したことで、事業に採算性がないことは明らかになった。
 展望のない計画への固執に国民の理解は得られず、政府内には廃炉にすべきとの意見も出てきたという。政府のトップダウンできっぱりと廃炉方針を決め、速やかに廃炉に向けた事業転換に踏み切るべきときだ。
 高速増殖炉は、原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを燃料の一部に使う。発電しながら新たな燃料を生み出す核燃料サイクルの要とされる。実用化までの4段階のうち2段階目の「原型炉」で、1994年に初めて核分裂が続く臨界に達した。
 95年には冷却材のナトリウムが漏れて火災が起こったほか、その後、燃料交換装置が炉内に落下した。2012年以降も機器の点検ミスなどの不祥事発覚が続き、原子力規制委員会は13年に、運営する日本原子力研究開発機構に運転再開準備の凍結を命じた。
 しかし、改善の兆しが見えず、機構を「運転する基本的能力がない」とまで断じた規制委は、15年にもんじゅを所管する文部科学省に運営主体の変更を勧告した。
 文科省が設置した有識者検討会では過去の事故やトラブルの振り返りに時間を割いて議論は深まらず、今年5月に出した報告書では具体的な新運営主体を示せず、検討会の傍聴を続けた他省庁や電力業界からは文科省の当事者意識のなさに批判が相次いだという。
 政府は14年に決定したエネルギー基本計画で、もんじゅを放射性廃棄物を減らす研究拠点に位置付けた。もんじゅのつまずきは、核燃料サイクルの破綻にほかならない。もんじゅを前提にした使用済み燃料の六ケ所村再処理工場(青森県)は完成が見通せていない。
 核燃料の最終処分策が進まない中で、日本が持つ核兵器にも転用できるプルトニウムが47トンにも上る。核兵器への転用懸念は強く、もんじゅ廃炉後は積み上がった核のごみを増やさない政策にこそ資金と技術の集中を図るべきだ。

[京都新聞 2016年08月31日掲載]

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