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カジノ法案  賭博が経済対策なのか

 「貧すれば鈍す」と言うが、刑法が社会悪として禁ずる賭博を国会が奨励してどうするのか。カジノを解禁する統合型リゾート施設(IR)推進法案が自民党と日本維新の会などの賛成多数で衆院内閣委を通過した。今国会で成立する可能性がある。
 超党派議員連盟によるカジノ解禁を目指す動きは、安倍晋三首相が成長戦略の目玉としたことで勢いづいた。課題だらけの法案を会期延長の隙を突いて審議入りさせ、わずか3日で採択とは、あまりに強引で拙速だ。
 法案は、利益の一部を社会還元させる条件でカジノと会議場、ホテルが一体となった施設の設置・運営を民間に認め、政府は施行後1年以内に必要な法整備を行う。要は、早くカジノを合法化せよ、と政府をせき立てる法案である。
 議連の細田博之会長(自民総務会長)は「観光と地域経済の振興に寄与し、財政改善にも資する」と強調する。2020年東京五輪と25年に誘致する大阪万博に間に合わせ、外国人客にカネを落としてもらおうという狙いである。
 しかし弊害も目に付く。暴力団の関与、マネーロンダリング(資金洗浄)への悪用、治安や環境の悪化、青少年への影響、日本人の利用制限など懸念と課題が多い。ギャンブル依存症の増加に拍車をかける恐れもある。厚生労働省の2年前の推計では、パチンコや競馬などに依存する人の割合は4・8%で、英米と比べて3~5倍も高かった。カジノ解禁が依存症対策に逆行するのは明らかだ。
 推進派が言う経済効果も疑わしい。関西経済同友会は今春、大阪港の人工島・夢洲にカジノを誘致した場合、施設や交通網の整備などの投資効果を1兆4700億円と試算したが、過大ではないか。
 内閣委では「韓国やマカオでは利用客が落ち込み、斜陽産業だ。日本誘致は無謀」(共産・島津幸広氏)と指摘された。訪日客数は世界経済や為替、国同士の関係で大きく変わる。それを当て込むカジノが地域経済の安定した活力源としてふさわしいとは思えない。
 自民が採決を急いだ背景には、万博とカジノを実現したい維新に恩を売り、安倍首相が執念を燃やす憲法改正に賛同を得る思惑が透ける。慎重派だった公明は自主投票に回り、主体性を欠いた。
 環太平洋連携協定(TPP)関連法、年金制度改革法案と、十分な議論もなく与党が数の力で押し切る国会運営が目立つ。国政の失策のツケを払うのは国民である。いま一度、熟議を求めておく。

[京都新聞 2016年12月03日掲載]

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