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GPS捜査  秘密主義は人権脅かす

 事件の捜査に衛星利用測位システム(GPS)端末を使ったことを、取り調べで容疑者に明かさず、捜査書類にも記さず、事件を広報する際も公にしない-。そんな「秘密保持」の徹底を警察庁が2006年6月に都道府県警に通達していたことが分かった。
 理由について警察庁は、具体的な捜査手段が分かると対抗策を講じられかねないため、と説明する。
 だが、これではGPS捜査自体が「なかった」ことにされ、第三者による事後検証や当事者の不服申し立てを阻むことになりかねない。かねて不透明さが指摘されている捜査手法である。不信を広げるような運用は、厳に慎まなければならない。
 GPS捜査は、衛星電波を受信する小さな端末を捜査対象者の車などに取り付け、当人に知られず現在位置や移動履歴をつぶさに把握する。捜査員による尾行に比べ容易で経費もかからず、捜査効率を上げる有力な手段ではあろう。
 ただ、現行法はGPSによる捜査を想定していない。警察は裁判所の令状のいらない「任意捜査」と位置づけ、運用要領を非公表にしている。犯罪の嫌疑や危険性が高く、他の方法では追跡が難しい場合にGPSを利用するというが、例えばどんな基準で対象者を決め、集めた行動記録をどう管理するのか、いつまで記録を保存するのか、警察の裁量のみに任されている。
 立ち回り先などの詳細な記録は、当人の交友関係や思想信条を映す可能性が高く、重要な個人情報だ。日弁連は「蓄積された情報が将来の行動予測やプロファイリング(犯罪情報分析)に使われるなど、目的外利用の恐れがある」と指摘している。「監視国家」の懸念を払拭(ふっしょく)するためにも、運用実態を外からチェックする仕組みが必要だ。裁判所の令状を取る手続きは、その大前提である。
 GPSをめぐってはプライバシーの侵害だとして、令状なしの捜査の違法性を争う訴訟が各地で起きている。裁判所の判断は割れているが、違法性を認めた昨年6月の名古屋高裁判決は、GPS捜査を規制する新たな立法的措置を検討すべきとした。最高裁大法廷での統一判断が今春にも示される見通しだ。
 携帯電話の位置情報についても、令状はいるものの利用者の知らないところで捜査に活用されている。GPS捜査全般を法律にきちんと位置づけなければ、際限のない人権侵害を招きかねない。

[京都新聞 2017年02月04日掲載]

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