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法相文書   閣僚の資質が問われる

 「共謀罪」の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、国会審議が紛糾している。
 金田勝年法相が「法案提出後に議論すべきだ」とする文書を法務省に作成、配布させた問題で、民進党など野党4党は強く抗議し、辞任を要求する方針で一致した。
 法案自体は提出されていなくても国民が注視する議論を制限するような姿勢は不見識極まりない。閣僚の資質を疑われてもやむを得まい。文書作成を事細かに命じられた法務省の幹部からいさめる言葉もなかったのだろうか。
 「共謀罪」導入の法案は、犯罪の計画に加わっただけで処罰されることから、捜査機関の拡大解釈や乱用を懸念する世論の反発でこれまでに3回廃案になっている。
 このため、政府はイメージ刷新を狙って名称を変更。適用対象を「組織的犯罪集団」に限定し、現場を下見するなどの「準備行為」を要件としている。対象犯罪の数も676から200~300に絞る予定で、2020年の東京五輪・パラリンピックのテロ対策に必要だと主張している。
 ところが、法相は、衆院予算委員会での野党の質問に対して答弁に窮する場面が多く、審議はたびたびストップしてきた。そうした事態の打開を狙ってか、法案が検討中で与党協議も終わっていないことを理由に「国会に提出後、所管の法務委員会でしっかり議論を重ねるべき」とする文書を、報道機関向けに配布させたという。
 野党が「質問封じだ」「国民を愚弄(ぐろう)している」と厳しく批判したのは当然だろう。法相は「注文を付ける意図は全くなかった。不適切だった」と文書を撤回、謝罪したが、それで済む問題ではない。
 改正案を巡る審議では、過去の政府答弁書との矛盾が問題視されている。政府は、国連の国際組織犯罪防止条約を批准するため法整備が必要だというが、これまでの答弁では「対象犯罪の選別は条約上できない」としている。そうすると、改正案は条約と適合しないのではないかという疑問が出てくる。
日本弁護士連合会は現行法で条約の批准は可能と指摘する。
 改正案の必要性が問われる問題だ。徹底した議論を通じて明確にしなければならない。にもかかわらず、法案の根本部分について答弁できないようでは、大臣の役割は果たせないのではないか。
 安倍政権は国会審議を軽視する強引な運営が目立つ。そうした姿勢が今回も表れていないか。

[京都新聞 2017年02月10日掲載]

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