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軍事研究  科学者が自ら歯止めを

 日本の大学や公的機関の研究者に米軍が研究費の提供を続け、2007年から10年間の総額が少なくとも8億円超にのぼることが分かった。資金提供はそれ以前にもあったことが判明しており、長年にわたり常態化していたとみていい。
 科学者でつくる日本学術会議は、過去の戦争協力への反省から1950年と67年に「軍事研究を行わない」とする声明を出した。しかも2回目は日本物理学会主催の国際会議に米軍資金が流れていたことがきっかけだった。声明は半ば空洞化していると言わざるをえない。
 軍事研究を巡っては、防衛省が軍事にも民生にも使用できる軍民両用の基礎研究の公募制度を2015年度から始め、学術会議が対応を巡って検討を進めている。4月の総会で結論を出す方針だが、こうした外国の軍事組織からの資金提供なども含めて慎重に議論を深める必要がある。なし崩しで「軍学共同」の流れを加速させてはならない。
 米軍からの資金提供は100件超で、研究対象は人工知能(AI)やロボット、艦船に近づく無人機を攻撃するレーザー、航空機の機体を軽くする炭素繊維素材など幅広い。申請手続きが簡単で研究結果の公表も自由といい、大学に支給される研究費が減らされ、資金不足の研究者にとっては魅力的に映るのだろう。
 一方、防衛省の公募制度の予算も増大している。当初3億円だった助成額を17年度には一気に110億円まで増やす予定だ。軍民両用の技術開発の流れは、確実に強まっている。
 この公募制度について学術会議では「軍事研究は方向性や秘密性の保持を巡って、政府による介入が大きくなる」といった問題点が中間報告で指摘された。「自衛目的なら許容される」との意見もあるが、自衛と攻撃を区別することは困難だ。学術会議には声明の原点に立ち返り、毅然(きぜん)とした判断を求めたい。
 同時に各大学も問題を主体的に捉え直すことが大事だ。これまでに関西大が「人類の平和・福祉に反する研究活動に従事しない」との研究倫理基準に従って応募禁止を決めたほか、新潟大、広島大などが応募しない方針を決めている。
 資金の出どころが軍事関係組織であれば、民生用にも使える基礎研究とはいえ、主目的は軍事利用にあり、それに加担する危険性は常にある。そのことに自覚的であってほしい。

[京都新聞 2017年02月18日掲載]

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