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「共謀罪」法案  内心の自由危うくする

 戦前のように、人が集まって話し合うだけで罰せられる社会につながりかねない。
 新たな「共謀罪」を柱にした組織犯罪処罰法改正案がきのう閣議決定された。戦後民主主義社会の基底にある内心の自由を危うくする恐れを拭いきれない。
 古来、アリの穴から堤も崩れるという。法案に反対である。
 安倍政権は今国会での法案成立をめざすが、さまざまな疑問に答えられるのか。国民は議論の行方を注視する必要がある。
 改正案は、「組織的犯罪集団」の2人以上のメンバーが重大な犯罪を計画し、少なくとも1人が資金の手配や下見など「準備行為」をしたとき、計画した全員が処罰される、としている。
 実行後の処罰を原則とする現行の刑法体系が、根底から変わることになる。日本弁護士連合会の指摘に危機感がにじむ。
 組織的犯罪集団の例示として、テロ組織や暴力団、麻薬密売組織などを挙げるが、あいまいさが残る。当初は別目的の組織でも、犯罪目的に一変したとみなされれば対象となる。
 そこに恣意(しい)的な運用や捜査が入り込む余地がある。歴史をかえりみて、市民団体や労働団体などにも適用されかねない怖さがある。
 要件である「準備行為」にしても幅がある。内部の計画合意をどう把握するのか。最高裁が違法としたGPS捜査のほか、電話やメールの傍受、おとり捜査などが広がりかねない。
 これでは歯止めがきかない。思想の自由やプライバシーなどが脅かされる監視社会にならないか。
 共謀罪法案は3回国会で廃案になっている。それを政府は2020年東京五輪・パラリンピックのテロ対策と看板を変え、共謀罪を「テロ等準備罪」に言い換えたにすぎない。国民に受け入れられやすいようにとの思惑が透けるだけに、用心しないといけない。
 政府は、2000年に日本が署名した国際組織犯罪防止条約に締結するため、共謀罪の新設が必要というが、もともと条約はマフィアなどによる経済的な犯罪の撲滅をめざすものだ。
 日弁連は、新たな共謀罪なしでも、日本には条約締結できる法制度があると指摘する。組織犯罪集団による犯罪を未遂前に取り締まれる予備罪・共謀罪が計58あり、刑法の共謀規定も含め実際には広く共謀処罰が可能だという。
 なぜ、それ以上に新たな共謀罪が必要なのか。怖さを感じる。

[京都新聞 2017年03月22日掲載]

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