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「共謀罪」審議  法案の必要性問われる

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が審議入りした。
 日本国憲法は「思想・良心の自由」や「表現の自由」を定めており、犯罪実行後の処罰を原則とするのが現行の刑法体系だ。それに重大な変更を迫る法律である。捜査機関が拡大解釈したり、市民団体に適用される懸念が拭えず、内心の自由が侵される恐れは強い。性急な審議で課題は解決できまい。
 にもかかわらず、政府は、国民の不安や疑問にこたえる誠実さに欠けると言わざるをえない。
 国会では先に提出された法案の審議を優先する原則があるが、性犯罪を厳罰化する刑法改正案を後回しにして審議入りを決めた。与党内でも難色を示していた公明党を自民党が押し切った形だ。なぜ成立を急ぐ必要があるのか。
 政府は、2020年東京五輪・パラリンピックを見据えたテロ対策として、国際組織犯罪防止条約を締結するためには「共謀罪」新設が必要と説明している。
 しかし、もともと条約の狙いはマフィアなどによる経済的な犯罪の撲滅である。政府は2001年の米同時多発テロ以降、条約がテロ対策の性格を帯びたと主張するが、03~05年に3度も国会に提出された「共謀罪」法案は、世論の強い反対で廃案になっている。
 今回も人権侵害を招きかねない本質的な危うさは同じだ。国民が受け入れやすい「テロ対策」という看板に替えただけではないか。
 条約との関係も疑問だ。政府は当初676の犯罪を対象としていたが、範囲が広すぎるとの批判を受けて277に絞り込んだ。
 政府は過去に、条約が4年以上の懲役・禁錮を定めた罪を対象にするよう求めているとして、対象犯罪は減らせないと答弁してきたはずだ。適用対象を「団体」から「組織的犯罪集団」に変更して対象を限定できたというが、納得のいく説明とはいえない。
 会社法や金融商品取引法などにおける民間の賄賂罪など条約の趣旨から対象にすべき犯罪が対象外になっているとの専門家の指摘もあり、ちぐはぐさは否めない。
 日本弁護士連合会などは、すでに組織犯罪集団による犯罪を取り締まる予備罪・共謀罪があることから新たな法律がなくても条約締結は可能だと指摘しており、法案の必要性自体に疑問符が付く。
 自民党は4月中にも衆院通過を目指しているというが、日程ありきは決して許されない。

[京都新聞 2017年04月07日掲載]

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