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衆院選の区割り  最低限の是正にすぎぬ

 1票の格差の「違憲状態」解消に向け、政府の衆院選挙区画定審議会が、小選挙区の区割り改定案を安倍晋三首相に勧告した。
 定数を減らす三重、奈良など6県をはじめ19都道府県の97選挙区の線引きを見直した。最大格差が今後3年間は2倍未満となるようにした結果、変更は全小選挙区の約3分の1に及び、1994年の制度導入以来、最大規模となる。
 多くの有権者、議員らに影響して戸惑いも避けられないが、違憲状態の解消が最優先であり、速やかな手続きと十分な周知が必要だろう。ただ、その場しのぎの限界は明らかで、抜本的改革を先送りし続けるわけにはいくまい。
 改定案の勧告は、過去3回の衆院選の1票の格差を最高裁が「違憲状態」としたのを受け、昨年成立した小選挙区「0増6減」などの選挙制度改革関連法に基づく。
 定数減の6県に加え、格差2倍以上の選挙区がある13都道府県も見直し、改定後は基準の2015年国勢調査時点で1・956倍、20年の人口見込みでも1・999倍となる。14年の前回衆院選の2・13倍を下回り、2倍未満という最低限の目標をクリアした形だ。その分、見直し対象は膨らみ、別々の選挙区に分割される市区町村は現行の88から105に増えた。
 歴史的つながりや生活圏などを考慮したというが、地域の一体感や議員との関係が薄れる懸念もある。変更に至る情報提供や地元への説明を尽くす必要がある。
 見過ごせないのは今回の改定が従来の定数配分方法を見直さないままであることだ。より人口比を反映させる「アダムズ方式」を衆院議長の諮問機関が提言したが、自民党は定数増減の影響を受ける現職議員を減らしたい党利党略で「0増6減」にとどめ、新方式を20年国勢調査後に先送りした。
 最高裁が問題視した各都道府県の「1人別枠方式」が温存され、2倍すれすれの格差が残るのを司法が認めない可能性もある。
 都市部への人口集中が続く中、格差は早晩2倍を超えよう。そのたび区割りを変えるのでは混乱と政治不信を招きかねない。地方の声が届きにくくなるとの不安も強い。
 専門家は、小選挙区では格差是正が難しく、死票も多いと弊害を指摘する。導入時に掲げた二大政党制でなく「1強多弱」が進み、原発、改憲問題など世論と議員構成の乖離(かいり)も目立つ。「信を問う」のにふさわしく、民意を的確、丁寧にすくい取れるような選挙改革から目をそらすべきではない。

[京都新聞 2017年04月21日掲載]

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