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憲法施行70年  性急な改憲許されない

 日本国憲法はきょう、施行70年を迎えた。戦後の日本は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という憲法の三大原則の下で、復興と経済成長を成し遂げ、新しい国をつくってきた。
 「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍晋三首相は在任中の憲法改正を目指しており、憲法施行70周年の記念式典でも「新しい時代の理想の姿を描くことが求められている」と強い意欲を示した。
 国会では、改憲に賛同する勢力が衆参両院ともに3分の2を超えて、改憲が現実味を帯びる。昨秋の臨時国会からは、憲法審査会も再開した。これまでに「参政権の保障」「国と地方の在り方」をテーマに議論や参考人質疑を行い、次は「新しい人権」の予定だ。
 審査会は、党派を超えて憲法に向き合う「熟議」の理想を掲げて出発したはずだが、自民党には、大規模災害時に国会議員の任期延長を認める緊急事態条項の新設や教育の無償化規定など、改憲項目を絞り込んで発議を狙う「前のめり」の姿勢が明らかだ。
 しかし、施行70年を経ても、国民のため直ちに改憲が迫られる政治状況にあるとはいえまい。自民は「復古的」と批判のある党改憲草案を事実上棚上げし、連合国による「押しつけ憲法論」の主張も抑制して改憲の実現を最優先にしているが、それではますます必要性があるかどうかという出発点があいまいになってしまう。
 世論との乖離(かいり)もみられる。
 共同通信の世論調査で、改憲を「必要」「どちらかといえば必要」とする人は60%、「どちらか」を含めて「必要ない」は37%で、容認派が増えているが、具体的な改憲項目で緊急事態条項や教育無償化をあげる人は少ない。
 国民の関心が高いのは「9条と自衛隊」だ。改正の賛否は拮抗(きっこう)しているが、自衛隊の存在を認め、国際活動へは歯止めをかけることを重視する意見が多い。さらに、日本が戦後武力行使しなかったのは「9条があったから」とする回答は75%に上り、平和主義が国民に広く浸透し、高く評価されている。こうした国民の意識に、正面から向き合う必要があろう。
 ただし、安倍政権での改憲については反対が51%で、賛成の45%を上回っている。安倍政権は、違憲の疑いがある安全保障関連法を成立させるなど強引な手法が目立つ。国民の懸念を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。憲法論議は国民が広く関心を持って深める必要がある。性急さは許されない。

[京都新聞 2017年05月03日掲載]

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